片岡尚之は「父のお下がり2ボール」でツアーを戦う
男子ツアー・ブリヂストンオープンを制した杉山知靖が使っていたのは、オデッセイの「2ボール」パター。その杉山と優勝を争った片岡尚之の手にも、「2ボール」シリーズのパターが握られていた。ちなみに6位に入った岩田寛も長年の2ボール愛用者だ。
杉山は2021年に発売された最新モデル「ホワイトホットOG2ボール」を使用し、片岡と岩田は2002年に発売された初代モデル「ホワイトホット2ボールブレード」をバッグイン。9月開催の国内男子ツアー「ANAオープン」では石川遼が「ホワイトホットOG2ボールブレード」を投入したことでも話題となった。
女子ツアーでは最近テーラーメイドの「トラス」シリーズの人気が高いが、男子ツアーでは名器と名高い2ボールの人気が依然として高い。一体なぜなのか? オデッセイのツアー担当・中島申隆氏はこう話す。
「2ボールパターだとアドレスしたときの方向合わせがすごく簡単で、安心感があるという意見が選手からも多いですね。日本ツアーの男子プロはパターを重要視している選手が多くて『少しでも入るパターを選びたい』という声のなかで一番多く挙がるのが2ボールなんです。長年の2ボールパターに対する信頼感も大きくて、今の若手選手から『岩田さんが使っている2ボールの形状が好き』という声もよく聞きますね。それもあって、最新モデル『ホワイトホットOG』シリーズでも選手が求めている2ボールの形状をラインナップしているというのは正直あります」(オデッセイツアー担当・中島申隆氏)
選手たちの使用モデルを見ると、基本的には「ホワイトホットOGシリーズや2ボールテンシリーズといった最新モデルの2ボールパターが採用されています」と中島氏。一方で岩田寛や片岡尚之が使用する初代ホワイトホット2ボールブレードも根強い人気を持っているが「メーカー側でももうストックがない」のだという。
「なので初代2ボールに関しては選手側でストックを確保していたり、それこそ中古ショップで購入している若い選手もいますね。また、片岡選手の初代2ボールはお父さんが使っていたパターだそうで、それで優勝も果たしているので『思い入れがあるから』とずっと使い続けていますね」(オデッセイツアー担当・中島申隆氏)
ちなみに中島氏によれば、プロが使う2ボールはシャフトの特性やウェートの重量、グリップを挿す向きなど、選手に合わせて細かく調整している場合がほとんど。開催コースや選手自身の調子によっても細かくカスタムする場合があるという。
「杉山選手の場合は少し軟らかめのシャフトで間を作りたいタイプなので、ストロークラボのブラックシャフトと組み合わせています。去年から今のパターにフィッティングして、大きな変更はないですね」(オデッセイツアー担当・中島申隆氏)
ただ一方、PGAツアーでは使用者をあまり見ない。スウィングコーチ・関浩太郎はその理由をこう分析する。
「PGAツアーのグリーンは総じて傾斜が大きく、そのためグリーンのスピードが速くなりやすいんです。高速グリーンではタッチを合わせることがなにより重要で、そのためにはより繊細なブレードタイプのパターがやりやすい。PGAツアーでブレードタイプの使用率が高いのには、このような背景があります一方、日本ツアーのグリーンはPGAツアーに比べて傾斜は少なく、グリーンコンディションが良いこともあって、フェース面の管理がより求められます。そのため、目標にスクェアに構えやすく、フェース面がズレにくい2ボールはもってこいなんです。ボールがふたつ並ぶ視覚効果で構えたとおりに打ち出しやすいというメリットもありますから」(関)
発売当時一世を風靡し、一組四人全員が2ボールユーザーということもまま起こりキャディさん泣かせとも言われた2ボール。押し入れに眠っているという人は、久しぶりに引っ張り出して使ってみても面白い。
写真/2021年のブリヂストンオープン 撮影/岡沢裕行
※2021年10月12日15時15分 文章を一部修正いたしました