2年前マスターズで史上最高の復活優勝を飾ったタイガーの足跡を踏襲し「マスターズ→ZOZO」で栄冠を掴んだ松山。「目の前でピシャリとドアを閉められた。最高のセカンドショットでグリーンを捉えてパットまで決めたんだから。まるで物語。かっこ良かった」と最終日最終組を一緒に回り2位タイに終わったトリンガーリは18番の松山のイーグルシーンを振り返った。
松山のイーグルパットはトリンガーリのパーセービングパットよりも距離があった。普通なら松山が先に打つべきところトリンガーリは自らが先にパットを打つと申し出て松山に最高の形で優勝させるお膳立てをした。
固唾をのんで“その瞬間”を見つめるギャラリー。トリンガーリは日本の熱狂的なファンと一緒になって劇的なイーグルの場面に立ち会った。自分は上がり2ホール連続ボギーで単独2位から2位タイに終わってしまったというのに、悔しさは微塵を見せず5歳年下の松山を尊敬の眼差しで見守った。
一週間を通してとトリンガーリは「日本のファンは温かい」と積極的に交流をはかっていた。最終日の中盤で連続バーディを奪ったときには一時松山を抜きトップに立ち、苦節10数年目の初勝利が見えた。だが11番で長いバーディを決め上昇気流に乗った松山に対しトリンガーリはそれ以降バーディを奪えず結局5打差で敗れ去った。
「本当に(松山は)すごい。打った後のリアクションではミスかな、と思うショットがちゃんといいところに行く。ファンに愛されて、すごく集中して、ストイックなプレーで勝機を掴んだね」
そう言ったトリンガーリはアマチュア時代から将来を嘱望される存在だった。09年には英国対米国対抗戦ウォーカーカップのアメリカ代表に選ばれ、その年の暮れにプロ転向。11年から本格的にPGAツアー参戦を果たしたがこれまで314試合に出場し未だ優勝はない。17年、18年は下部ツアーとの入れ替え戦行きを強いられるなど不振が続いたが、ここ3シーズンはプレーオフシリーズ進出を果たし、まだ始まったばかりだが今季は5試合連続で予選をクリアしている。
「こういう(優勝争い)位置で戦うチャンスを作れるように勉強している最中。今回は少なくともサンデーバック9に入ったところまでは踏ん張れたし、そのポジションに動揺することなく落ち着いてプレーできた。もっともっとこういう経験を積んで上位争いに慣れていきたい」
ジョーダン・スピースが彗星の如くツアーに登場したころトリンガーリも注目の若手のひとりだった。取材に訪れると「どこから来たの? 日本? あぁ、遠くまでご苦労さま」と渡米した我々を労う神対応。聞けば同世代のリッキー・ファウラーとアマチュア時代から仲が良いとか。ホテルに戻りゴルフチャンネルをつけるとファウラーとトリンガーリがCMで共演していた。あの頃はすぐにでも優勝できると思っていたに違いない。だがまだ至福の瞬間は訪れていない。
ナイスガイ、トリンガーリに幸あれ!