かつては丸山茂樹、深堀圭一郎、田中秀道らトップ選手が所属していたハルスポーツプロダクション代表のハル常住氏。タイガー・ウッズ家とも親交が深く、スポーツ科学の観点から研究、構築した「ハルメソッド」は有名で多くのトップアスリートはもちろん、子供から大人まで健康を維持するための運動指導を展開している。
「USPGAの教本のベースといわれる、1969年に出版された『完全なるスウィングの探求』という本がありまして、その本のなかに『完全なるスウィングはない!』とあるんですね。どういうことかと言いますと、打ち方にはみんな個性があって、共通点はただひとつ『インパクトの精度の高さ』だというんです」
誰もが飛ばせる型というものはないが、インパクトの精度こそが飛ばしの秘密。そのことが頭にあった常住氏は世に「トラックマン」が登場するといち早く購入、インパクト、「スマッシュファクター」の研究に明け暮れた。
さらにその中でもうひとつ出た答えが「軟らかいシャフト」だ。外国人のプロゴルファーなみに力があるのなら硬いシャフトでもしならせることができるが、一般のゴルファーには無理。一般の人でもしならせられる軟らかいシャフトが必要だ、と。
「しなりは必要なんですが、トルク(ねじれ)があると曲がります。しなるけど、トルクはタイガーのクラブなみ、トルクが少ないシャフトがいいんです」
しかし、最近になって研究テーマが増えたという。歳を重ねるにつれてだんだん飛ばなくなってきた。自分自身が飛ばせるドライバーは作れないものかと。
「軽いもののほうが速く振れる、そして飛ぶというのは昔からわかっていました。でもそれを実現する製作技術がなかったんですね」
時は流れ、ゴルフ製造の技術は進歩し、41グラムというしなってねじれないシャフトがついに完成。そして小振りでシャープなヘッドを装着、総重量278グラム、バランスB8という究極のドライバ「ファクターX」が完成した。
「ヘッドスピードが40m/sに届かなくなっていたのに、42、3出るようになりました。それでバックスピン量は2000~2500回転、最高で280ヤードまで飛ばせました」
リズムとタイミングで打てる。自分の、一般的な身体能力に適したクラブを使えば、誰しもが飛ばせるという。実際に手にして打たせてもらうと、確かに振りやすくヘッドスピードは2~3m/sアップし、45インチ、ロフト8.5度でもボールは上り、強い中弾道で飛んでいく。
驚いたことにこのドライバー、ヘッドスピードが遅めのゴルファーだけでなく、速いゴルファーでも同じスペックを使えるということだ。ハル常住氏の息子でプロゴルファーのジミー常住プロに打ってもらうと、ヘッドスピード50m/s近いというのに吹き上がらずに飛んでいる。
ゴルフの科学者はデシャンボーでなく自分(笑)というハル常住氏。「このドライバーでゴルファーみんなを飛ばし屋にして、笑顔にしたいそして自分も絶対、このドライバーで300ヤード飛ばしたい」と笑顔で語ってくれた。