この1ヶ月の古江彩佳選手は、「富士通レディース」で雨天の中、勝みなみ選手とのプレーオフを制して、翌週の「マスターズGCレディース」で2週連続優勝を飾ると、「三菱電機レディス」では3位タイ、そして「TOTOジャパンクラシック」で優勝と9千万円弱を一気に稼ぎ、賞金ランク1位の稲見萌寧選手にその差約400万円まで迫りました。
その原動力はショット、パット、アプローチの抜群の安定感にあります。231.4ヤード(60位)という飛距離ながら、今週のFWキープ率89.2%(全体の3位)、パーオン率83.3%(全体の3位)と、フェアフェイを外さないドライバーにグリーンを外さないセカンドショット、そしてシーズンを通してランク1位のパッティングが重なり盤石のプレーで、追いかける稲見選手から逃げ切りました。
「富士通レディース」ではピンを狙う怖さと戦い勝利を手にし、「マスターズGCレディース」では、自信のプレースタイルを崩さないマネジメントとゴルフ脳の高さを生かし、今大会ではメンタルも含めたすべての面で抜群の安定感で総合力の高さを見せつけました。
優勝会見を聞いたところ、東京オリンピックの選抜を逃してモヤモヤしていたということでしたが、浮上してきたきっかけは、「エビアン選手権」の最終日に同組でプレーし優勝したミンジー・リー選手のプレーだったように感じました。
「エビアンの 最終日 に ミンジー・リー さんと 回ったのが、すごく思い出には残っています。パーセーブをしっかりして、でも最後にバーディを取っていって、しっかり優勝というのはやっぱりカッコいいなと思いました。バーディを取ることも 大事ではあるんですけど、パーセーブは本当に大事だなと思わせてくれた1日でした」
その言葉の通り、今大会の4日間で打ったボギーはわずかに3つ。もちろんダブルボギー以上もありませんでした。ショットだけでなくアプローチとパットの精度の高さも備わっていることを表しています。
そして稲見選手は優勝争いの中で21歳とは思えないほど落ち着いていますし、何より楽しくプレーすることで自分のパフォーマンスを引き出すことができています。普通なら緊張感の中で体が思うように動かなくなるところですが、稲見選手、渋野日向子選手、笹生優花選手、西村優菜選手などそういった場面で持てる力を発揮できる選手が若い世代の中で数多く存在しています。
それらの選手たちの言葉からは、経験から多くを学ぶ成長マインドを持っていることが感じ取れますが、それだけでなくとくに勝負どころとなった16番パー5のバーディパットなど目の前の1打に集中する集中力の高さも印象的です。古江選手は集中のポイントはイメージを出すことだと教えてくれました。
「弾道のイメージとか、キャリーのイメージとかを考えることが、良い方向にいってくれてるのかなと思います。それこそ、ヨーロッパ遠征に行ったときに、キャディさんと会話するときに、細かいところは英語で難しかったけど、この キャリーで いいよ、っていうキャリーを言ってくれたりしたんです。それを意識することで結構上手くいったなというのを感じて、それで最近はキャリー のイメージをしています」
肝心な場面で自分の持てる力を発揮するために具体的なイメージを持つことが重要だと改めて感じました。選手たちは弾道計測器を使って各番手のキャリーを計測しながら練習しているのはそのためでもあるんです。
残すは「伊藤園レディス」、「エリエールレディス」、最終戦の「ツアーチャンピオンシップリコーカップ」の3試合。賞金女王争い、シード権争いも佳境に入って来ました。今季は賞金シードだけでなく、メルセデスポイントの50位までの選手にもシード権が付与されます。最後まで目が離せない戦いが続きます。