プレーオフ2ホール目でバーディを決め力強いガッツポーズを見せた中島だが仲間が駆け寄り祝福を受けると感情が込み上げ涙、涙。「なんて素晴らしい勝ち方なんでしょう。日本にとって今年は素晴らしい1年だ!」と実況アナウンサーが声を張り上げた。
2位に4度入っている日本アマで今年初戴冠。これまで度々優勝戦線を賑わしてきた国内男子ツアーで並み居るプロを一蹴しパナソニックオープンで史上5人目のアマチュア優勝を飾った。プロ顔負けの活躍はアジア・パシフィックアマ優勝の先輩、松山&金谷の足跡を立派に踏襲している。
金谷はいう。「中島くんはプレースタイルもスマート。スウィングもスマートで球もきれい。泥臭いゴルフをする僕と違って彼みたいな選手が本当のエリートだと思う」と。
世界のアマチュアナンバー1に与えられるマーク・マコーマック賞を受賞したことで来年は全米オープン、そして聖地セントアンドリュースで開催される第150回全英オープンの出場資格もすでに手中に収めており、アマチュア最後の年はさらなる飛躍が期待されている。
マスターズが開催されるオーガスタナショナルには白亜のクラブハウスの屋根裏にクロウズネストと呼ばれるアマチュア専用の宿泊施設がある。タイガーも全米アマに優勝しマスターズ出場を果たしたときに泊まった由緒ある“屋根裏部屋”である。
19年には金谷が1泊だけそこに泊まりワールドワイドテクノロジー at マヤコバでツアー3勝目を挙げたビクトル・ホブランらと貴重な一夜を過ごしている。
当時ホブランはもちろんアマチュアで全米アマ優勝の資格でマスターズ出場切符を手にしていた。そこでローアマに輝き全米オープンでもローアマのダブルタイトルを提げ同年11月にコリン・モリカワ、マシュー・ウルフらとプロデビュー。3人とも今や押しも押されぬトッププロだ。
金谷がホブランらと宿泊したときはアマチュア仲間とテレビでスポーツ観戦をするなど、まるでアメリカの大学の寮で過ごすようなワクワクする体験をしたそう。「もう1度行けるなら一週間ずっとクロウズネストに泊まりたい」と語っていた。
日本人がマスターズに出場すると家族や関係者を大勢引き連れて行くことになるので滞在期間中一軒家を借り上げて泊まることになる。しかしコロナによる規制も残っているであろう来年は少人数での渡米の可能性も。中島には是非ジャック・ニクラスやタイガーも泊まった伝統の屋根裏部屋を経験してもらいたい。
09年に「アジアから世界的スターを」を旗印に創設されたアジア・パシフィックアマチュア選手権は時を経て出身者である松山がグリーンジャケットに袖を通し関係者を歓喜させた。アジアから花が咲き実がなった。新たに結実しそうな果実=中島はゴルフの腕だけでなくルックスも中身もワールドクラス。将来が楽しみだ。