ヤマハの2021年モデルは、ルール最大級の慣性モーメントを持つ「RMX VD59」や、まさに異形という名がふさわしい「RMX VD40」アイアンなど、性能の向上を全面に押し出したクラブが登場しています。
お助け感満載のクラブは、ゴルファーにとってはありがたいものですが、「ヤマハっぽくないな」と感じたゴルファーも少なくないのではないでしょうか。そのヤマハっぽさ、ヤマハらしさのイメージを確立したのが、2007年10月に発売された「インプレスX 425V」です。
美しくシャープな形状に加えて、食いつきと弾き感を適度に両立させた打感。これぞプロモデルというしまった打音。それでいて、低浅重心と少なめのリアルロフトで、当時、飛距離性能がとても高かったドライバーです。
「インプレス」のブランドは、発売当初から高反発に力を入れていたこともあり、2000年代のヤマハは、飛んで打感が良いブランドというイメージが強かったのです。やさしさや曲がりにくさを全面に押し出した、今年のNEWモデルと比較すると、やはり小さくない驚きがあります。
「インプレスX 425V」は、長年愛用した藤田寛之プロの活躍もあって、長年名器という評価を受けてきました。あまりに完成度が高かったため、ヤマハの後継モデルはこのモデルから大きく特性を変えることが出来ない時期があったほどです。
短い重心距離と浅い重心深度。非常に低重心で、低スピン性能が高く、それが飛距離性能の高さにつながっています。いっぽう、これらの特性は、いわゆる“難しい”クラブの特徴でもあり、使いこなせるのはヘッドスピードが速く、ある程度の技量を持ったゴルファーでした。
ヘッド左右の慣性モーメントは、4000g・cm2強ほどで、なんと新製品のアイアン「RMX VD40」とほぼ変わらない数値になっています。クラブによりやさしさを求めるようになった2010年代以降は、こうした硬派なモデルはほとんど存在しなくなりました。まさにその時代を彩った名ドライバーと言えるでしょう。