「凄かったです。王者のゴルフでした」とは、今大会でキャディを務めた古賀雄二さんの言葉です。まさにショット、パットともに抜群のキレ味と安定感でピンチらしいピンチもなく、2位に9打差の圧勝でした。初日ほどではなかったものの同じような強風が吹きフォロー、アゲンスト、右から左からと風向きがが入れ替わる中で確実にグリーンをとらえ続けました。グリーンを外したのは2回ありましたが、それも手前に切られたピン方向のエッジでしたのでショットの精度は特筆すべきものがありました。
3日間のFWキープ率90.4%、パーオン率85.1%と2日間吹き荒れた風の中で安定していたショット力に、全体1位となる27.33のパット数が総合力の高さを物語ります。現地で見ていて感じたのは、風の読み、とくに風の強弱にショットのタイミングを合わせる能力がズバ抜けていました。風の呼吸を読み、弱くなるタイミングに合わせてショットをし、その隙間を通す。もちろんスロープレーにはならない範囲で。
テークバックからダウンにかけてなぞるようなルーティンをしながら風の息を感じているのでしょう。風がひと息つくタイミングでショットを繰り出し、風の影響を最小限におさえていました。そのことによって精度の高いショットでピンに対して安全なエリアから攻めるゴルフができていました。
「ショットが(ピンの)近くについてくれたんですけど、風とのいろいろなタイミングが上手く合ってラッキーだったかなと思います」
初日を終えての会見ですが、後半にスコアを伸ばせた要因を聞かれてこう答えました。でもそれは決してラッキーなのではなく、意図して風のタイミングを見計らって始動していました。風の強い日はなかなか自分のリズムを保つのはプロにとっても難しいことは、稲見選手以外のスコアを見れば明らかです。風の強かったAIG全英女子オープンやこれまで積んできた経験から普段から想定して練習していることが実ったプレーだったのではないでしょうか。
それと、優勝後のインタビューで朝の練習場では調子が悪かったという話していましたので、ラウンド中に修正できたのか聞いてみると修正できていなかったと話しました。
「修正できていなかった。なのでピンに対していっては行けないほうをキャディさんと確認しながら攻めました」
いまの調子のできる範囲の中で無理をせず、持ち球のフェードボールを操りグリーンに乗せ、好調なパッティングでバーディを奪うという稲見選手のゴルフ力の高さをまた見せつけられました。統合された20-21年シーズンで9勝目を挙げ賞金女王争いでも2位の古江彩佳選手に約2千万円の差をつけ初の賞金女王に向け視界は良好です。
いっぽうのシード権争いに目を向けると、何としてもシード権を獲得したい高木優奈選手は8オーバー56位タイで終え賞金ランク60位、メルセデス・ポイントランクでも56位と残り1試合でシード権を獲得するには優勝に近い位置での終えることが必要になっています。今季から賞金ランク50位だけでなく、メルセデス・ポイントランクでも50位以内にはシード権が与えられます。賞金ランクでは59位に位置する河本結選手はメルセデスポイントでは50位にランクしていますので今週確実に決めたいところ。今週末のシード権争いと賞金女王争いから益々目が離せなくなりました。