ご存じの通り、谷原秀人選手は2003年に初優勝を挙げ通算15勝を誇るトッププレーヤーです。17年から欧州ツアーに挑戦し数多くの上位フィニッシュを果たし20年からは国内ツアーに復帰していました。最終日は幡地隆寛、金谷拓実選手の二人の若手と最終組でスタートし、周囲の展開も見ながら15番と優勝を決めた18番のバーディを奪う辺りは勝ち方を知っているベテランらしいプレーでした。
谷原選手は、昨年開催されたツアー外の2日間競技「ISPS HANDA 医療従事者応援 ジャンボ尾崎記念 チャリティトーナメント」の2日目に8アンダーを叩き出し優勝を手にしていました。その姿を現地取材して大幅にスウィング改造をしてきた成果が出始めていると感じていたところ、最終戦の「ゴルフ日本シリーズ」でも優勝争い。しかしながら、最難関の最終ホールをボギーとしてしまい惜しくも2位となり20年を終えます。
21年はなかなか調子が上がっていませんせんでしたが、2戦前の「ISPS HANDA ガツーンと飛ばせ ツアートーナメント」を5位タイ、前戦の「マイナビABCチャンピオンシップ」でも7位タイと上り調子で今大会を迎えると、スウィング改造の成果と以前使っていたセンターシャフトのパターを引っ張り出したことが最後のピースとなり5年ぶりの優勝を手繰り寄せました。ドライバーは本間ゴルフの「T//WORLD GS」を使用していますが、ロフトを2度寝かせ11.5度というスペックにして、高い球をやさしく打っているのにも注目です。そしてボールも本間ゴルフ「TW-X」。コストパフォーマンスにすぐれていると評判ですが、プロのトーナメントでも戦えるボールだと証明しました。
2019年から谷原秀人選手をサポートするプロコーチの吉田直樹コーチに話しを聞くと、効率のがよく再現性の高いスウィングを目指してきたと話しますが、その中で大切にしてきたのは試合で結果をだせる谷原選手にマッチしたスウィング改造だといいます。
「以前よりもシャロ―なダウンスウィングで前傾もキープされ、ボールのコントロール性が上がってきていました。アドレスから何からすべて変えて来ましたので本人の努力は大変だったと思います」(吉田直樹コーチ)
実際に2016年のスウィングと2戦前のスウィングを比較してみました。以前に比べて右の肩よりも下からクラブが下りて来ていますしクラブフェースの向きも変わっています。そのことによって入射角が浅くなりスピン量が適正になりショットの安定感につながったことは容易に想像できます。
プロに限らずスウィングを改造する上で重要なことはやり抜くというメンタリティです。今までの感覚を壊すのは怖いことです。想定外のミスも出ますしすぐには成績に結びつかない期間がある程度必要になります。吉田コーチによると谷原選手は昔の良かった頃のスウィングに執着しない、恐れずにやり抜く、できないからやるんだというメンタリティが備わっていると続けます。
「谷原選手は、ぶっ壊して新しいものを探して試す、そして自分に合うものを見つける。それが楽しいと思える強靭なメンタルを持っています。普通はやろうとしてできないと元に戻してしまうんです。それは今以上に悪くなることが怖いから。怖さを恐れずにやり抜きまた次に進めるメンタリティが谷原選手の最大の武器なんだと思います」(吉田直樹コーチ)
恐れずにやり抜くとは言葉では簡単ですが、試合に出場しながら続けるにはかなりのタフさが必要になります。渋野日向子選手や石川遼選手もそうですが、過去に結果を出した選手がスウィング改造に踏み切り、それを成し遂げ、結果を出していくことは容易なことでないと理解できます。欧州ツアーへの挑戦もしていきたいとゴルフへの情熱はまだまだ続きます。谷原秀人選手のこれからの活躍に期待しています。