弾道計測器はインパクトを解析することでどんな弾道になったかを可視化し、クラブの動きや打点の違いなどによる飛距離の分析に大きな進化をもたらした。いっぽうで体とクラブにセンサーやマーカーを装着し、カメラ等でトラッキングすることで可視化する3Dモーションキャプチャーの登場は、ゴルフスウィングの解析を大幅に進化させた。
動画に線を引いて体の動きをわかりやすくするものから、現在は骨格の動きを可視化してスウィング解析が行えるものまで、さまざまなスマホアプリが登場しているが、こういったガジェット好きなゴルフコーチ北野達郎が試しているのは「SPORTS BOX AI」というコーチ専用のアプリ。
アメリカ発のこの「SPORTS BOX AI」はマイク・アダムス、ショーン・フォーリー、デビッド・レッドベターといった全米トップクラスのコーチが開発に関わっているという。アプリの特徴を北野に聞くと、スマホで正面からスウィングをスローモーション撮影するだけで現在、最高峰の解析器「ギアーズ」に近いスウィング解析ができることだという。
「撮影後約1分でアバターがスウィングを再現してくれます。30個以上のキーポイントをAIで診断し、18項目のリアルタイムの動きが計測でき、それぞれの動きが角度で表示されるので現状のスウィングの把握とコーチング後のビフォーアフターの違いもはっきりと確認できます」(北野達郎コーチ)
実際のレッスンにこのアプリを導入するメリットは、受講したゴルファーからの高評価だけでなくインストラクターとしてもスキルアップできるツールだと続ける。
「スウィングは人によって千差万別です。さまざまな選手のスウィングを解析することでメカニズムを学び、レッスンを受けに来たゴルファーにマッチした改善を提案することができます。例えば体の動きの連動性や動き出す順番が明確に可視化されるので、質の高いレッスンが提供できます」
確かに稲見萌寧や高橋彩華を指導する奥嶋誠昭コーチも3Dモーションキャプチャーの「ギアーズ」が手元にあったことでスウィングに対する知識が向上し、選手によって改善すべき点と残しておくべき点が明確になったと話している。
近いうちにギアーズと比較してその精度を確かめたいと北野コーチ。現在のところゴルフコーチ専用の利用に制限されており、利用料はサブスク方式で月額$65~189という価格とのこと。
スローモーションの動画を送ってもらえば遠隔でのレッスンもできるようになるし、コースや練習場でも擬似的な3Dモーションキャプチャーを使ったスウィング解析ができることは、受講するゴルファーにとってオンリーワンのレッスンを受けられるという大きなメリットになるだろう。
写真提供/北野達郎