――狩野さんは、ゴルフは3年前に少しやったことがある程度で、そこからブランクが2年半。これまでラウンド数は計4回で、ベストスコアは137。今年に入ってからまたやり出したということで、さらなる上達を目指して、小澤のもとを訪れることに。
狩野:さっそくなんですが、ボールの上を叩いてしまい、球が上がらず転がってしまうミスが多いんです。あと、球が左に出ることも多いですね。
小澤:なるほど。狩野さんはスウィングの際になにか意識しているポイントはありますか?
狩野:フィニッシュで体が起き上がってしまうので、最後まで頑張ってボールを見続けるようにはしています。
小澤:ではその辺りを意識しながら、ボールを真っすぐに力強くヒットできるようにレッスンをして行きたいと思います。
狩野:よろしくお願いします。
――まず、狩野さんに男性用クラブの9番アイアンを打ってもらい、スウィングをチェック。1球目は空振りしてしまい、2球目は72.4ヤードという結果に。ただ、この2球で小澤は狩野さんの課題を発見。丸い標的が印された「インパクトバッグ」と呼ばれる練習器具と「ピコピコハンマー」を持ち出してきた。
小澤:このインパクトバッグの丸印の所をハンマーでピコッと叩いてもらっていいですか。
狩野:こうですか?
小澤:そうそう、いい感じです。いま、どうやって叩きましたか?
狩野:手首を使って叩きました。
小澤:正解です! ゴルフスウィングでは、いまやった手首の動きが凄く大事なんです。先ほどの狩野さんのスウィングを見ていると、リストの動きが入っていなかったんです。なのでこれからリストを柔らかく使う練習をして行きたいと思います。
――ここで9番アイアンのヘッド側を持ち、グリップエンドで先ほどと同様に、インパクトバッグの丸印の中心をトントンと叩くように促す。
小澤:ちゃんと真ん中を叩けていますよ。さすが、アスリートは違いますね。
狩野:本当ですか(笑)。
小澤:じつはこの動きってゴルフにとっても凄く大事で、これくらい軟らかく手首を使って欲しいんです。
狩野:あ、でも今までは手首は凄く強くガチッと握ってしまっていたと思います。
小澤:そうなんです。スウィングを丁寧にしようとすればするほどグリップって強く握ってしまいがちで、そうなるとバックスウィングで大事な「コック」という手首を使う動作が入ってこれなくなるんです。この「コック」は正しくボールを叩いたり、飛ばすときに大事な動きになるんですけど、狩野さんはクラブを丁寧に真っすぐに動かそうとする意識が強くて、このコックがあまり入れられていない状態なんですね。それでボールの頭を叩いたり、球が上がらなかったりすることに繋がっていると考えられます。では、そのコックを使うことを意識しながら、またインパクトバッグを叩いてみましょうか。
――続けてアイアンのグリップエンドでインパクトバッグを叩いていく。このときに、バックスウィングで「コック」を入れ、インパクトでコックを解くといった手首を使って叩く動きを覚えることがポイントだ。最初は小さなスウィングで叩き、上手く叩けるようになったら、次第に振り幅を大きくしていく。
小澤:いい感じです。いま、バックスウィングで手首が90度くらいの角度に入っています。コレで「タメ」といわれる形ができるので、このタメの形をダウンスウィングではずっと保ってきて、インパクトでリリース(開放)していくとボールが力強く打てるわけです。
狩野:そうなんですね。
小澤:では次は実際に球を打っていきましょう。
――まず、最初に野球ボール大のプラスチックボールを打っていき、いい感じで打てるようになったところでゴルフボールに。しかし、プラスチックボールでは調子良く打てていた狩野さんだったが、ゴルフボールになった途端に当たりが悪くなってしまった。そこで再度、プラスチックボールに戻して打つことにするとナイスショットが出始める。この違いが出る理由を小澤が解説する。
小澤:ゴルフボールって小さいので、丁寧に当てようと思って横から撫でるような打ち方になりやすいんです。この撫でるような動きをすると「アーリーリリース」といって、インパクトの前に手首のタメを解いてしまい、インパクトで球を掬い上げる「すくい打ち」に繋がるわけです。でもボールが大きくなるとハンマーで叩く動作ができるので、メチャメチャ良い感じで打てていましたよね。それは球が大きくなったことで丁寧に打っていなくなったからなんです。
狩野:へぇ、そうなんですか。
小澤:はい。例えばハエ叩きって、丁寧に撫でるように叩こうとしませんよね。
狩野:丁寧にしていたら、ハエに逃げられてしまいますもんね(笑)。
小澤:そう。素早くバシーンってリストを使って叩きますよね。そうやってリストを使うことによって、安定してモノを叩くことができるんです。
狩野:バレーボールのスパイクも腕を大振りするほど当たらないというか、やっぱりリストで叩くことが凄く大事なんです。一緒ですね。
――手首のコックを使うことでインパクトで安定して強い球が打てるようになってきた狩野さんだが、もうひとつの課題である、体が起き上がらない綺麗なフィニッシュ作りに関して小澤がレクチャーする。
小澤:では、“映える”フィニッシュを作っていきましょう。フィニッシュのときに、シャフトで両耳を串刺しにするイメージでクラブを頭の後ろ側に収めてみてください。
狩野:えぇ~、こんなに体を回すんですか?
小澤:はい、それで少し胸を張ります。
狩野:今まで、フィニッシュを意識したことはなかったです。
小澤:フィニッシュが決まっていれば、打った球はナイスショットです。逆にフィニッシュが崩れていた場合はショットもミスをしている可能性が高いです。だから、ナイスショットしたぞ、みんな見て! って言う感じでフィニッシュを取るようにしてみてください。
狩野:へぇ~、見せ所なんですね。
小澤:そうなんですよ。じゃあ、フィニッシュを意識しながらカラーボールを打ってみましょう。
――さすが元全日本選手、飲み込みが早く、いきなりナイスフィニッシュ、ナイスショットの連発に、小澤が「素晴らしい!」と誉めると、「本当ですか(笑)」と半信半疑の狩野さん。そこで、ビデオで確認をすると、「あ、本当だ。全然違う」と自らのフィニッシュを見て納得。最後に、ゴルフボールを打つと、ストレートな球筋で飛距離も92ヤードのナイスショット。課題の左に飛ぶボールも出なくなり、飛距離も最初の72.4ヤードから20ヤードも伸びた。
小澤:今、何を意識しましたか?
狩野:力まないで打つことですかね。飛ばしたいときほど力んで体がピョンと持ち上がってしまうので、今は、手首を柔らかく使って打つことだけを意識しました。
小澤:なるほど。ちなみにバレーボールのアタックのときの力感ってどんな感じなんですか?
狩野:腕を振るときに力を入れてしまうとガチガチになってしまうので、ボールを叩く一点に集中して力を入れて振り抜く感じです。
小澤:凄い、そのパワーの出し方はゴルフも同じです。どうでしたか。
狩野:確かに。普段はガチガチに力が入っているのに、今は全然、力が入っていないのに手首を柔らかく使うように打ったら飛んでくれました。
小澤:良かったです。次回は、ドライバーショットでもっと飛ばせるように頑張っていきましょう。
狩野:よろしくお願いします!
撮影:野村知也
撮影協力:レッツゴルフ銀座