アマチュアゴルファーが本場の米ツアーを見るようになって、人気のクラブといえば米国モデルばかり。しかし今年は違う傾向が見られたようだ
ここ数年は、海外メーカーが人気で、ゴルフクラブ市場を席巻していると言っていい。2017年のキャロウェイ「GBB エピック」や2019年のピン「G410」のような大ヒットモデルが存在感を発揮し、テーラーメイド、タイトリストもアスリート向けモデルを中心に大きな支持を得ている。
こうした傾向は、2000年代後半から徐々に進んでいた印象があるが、それ以前ということで言えば、国内メーカーの意欲的なモデルが群雄割拠していた時代が長く続いた。古くはマルマン「ダンガン」やマグレガーの「マックテック」、有名どころではブリヂストン「J’s」や「ツアーステージ」など人気のブランドが数多くあり、プロギアの「インテスト」や「zoom i」のように、世界に先駆けて新しいカテゴリーであるアイアン型UTを登場させたりと、何かと元気がよかったものだ。
そんな時代を知る者には、昨今の国内メーカーはなんとなく存在感が薄いように見えて寂しい気もするのだが、今年は少し事情が違うようだ。もちろん、グローバルに展開する海外メーカーの優位は動かないが、国内メーカーからもスマッシュヒットが登場するのが目立ってきた。
まず前作から大きく躍進して見えるのが、ダンロップの「スリクソンZX」だ。こちらはなんと言っても昨年、松山英樹がついに使用を開始したことで大きな話題になった。ドライバー2機種、「ZX7」と「ZX5」いずれも人気で、松山がマスターズに勝利してからは、さらに勢いに加速がつき、アイアンセットを中心に欠品が相次いだ。供給が追いついていれば、海外メーカーに比肩するヒット作になっていたかもしれない。
秋の新製品では、ブリヂストンの「B2」ドライバーが好調だ。これはそれまでの人気ブランド「JGR」の後継に位置づけられるモデルだが、それまで一定の評価を受けていた「つかまりやすさ」や「振りやすさ」に加えて、精悍なデザインと男子ツアープロも愛用する本格派の形状などが支持されて、発売後から継続して大きな支持を得ている。
2021年秋に関しては、海外メーカーの新製品がひと段落し、新製品もアイアン中心のラインナップだったので、その間隙を縫った点も否定できないが、秋以降は「ゼクシオ11」のマークダウン品と並んで、「B2」が店頭売上を引っ張るヒット作になっている。
面白いところでは、10月末に発売されたヤマハの新製品「RMX VD」も発売初週から、かなり勢いがある。ルール最大級の慣性モーメントを持つ「RMX VD59」と契約プロの使用が話題になっている「RMX VD」の2種類のドライバーが人気で、驚くのは、ヒール寄りに出っ張りのある異形のアイアン「RMX VD40」がスマッシュヒットとなっていることだ。
「RMX VD40」は、トウとヒールに重量を配分し、ヘッドサイズの大きさも相まって、アイアンとしては規格外のヘッド左右慣性モーメント4000g・cm2を達成した意欲作だ。その独特な形状や打感などから、有識者の間でも賛否が割れていたが、多くのユーザーがそのやさしさを評価したということだろう。これは裏を返せば、アイアンをビシッと打てていないと感じていて、クラブに寛容性を求めている人が多いとも言えそうだ。
ほかにもグローブライドの「オノフ黒」やプロギア「egg44」など、新たなアイデアをもった意欲作も店頭での動きが良い。ヤマハにも言えることだが、はっきりと特徴を持ったことで、その違いを楽しめるユーザーに選ばれていると言えそうだ。今後は、グローバルモデルにはない際立った特徴を持った、いわばニッチ向けのクラブが、国内メーカーから多く登場するかもしれない。
※参照 矢野経済研究所「ゴルフ用品小売実売動向調査 YPSゴルフデータ」