国内外のトーナメントで数多くのプロが愛用するテーラーメイド「スパイダー」。
「スパイダー」とひとことに言っても複数のモデルがあり、形状や色、アライメントなど多くのバリエーションがあります。もはや、「アンサー」や「オデッセイ#7」のような定番のパター形状だと言っても過言ではないでしょう。
しかし、「スパイダー」は最初から定番として受け入れられたわけではありません。2008年に発売された初代「スパイダー」は、その巨大さから明らかに異形のパターでした。愛用したプロも少なくないものの、あくまでもブレード型のシャープなパターに不安のある選手が使用する形状という印象がありました。
潮目が変わったのは、ジェイソン・デイの登場です。デイはパッティングの名手ですが、必ずしもシャープで操作性の高いパターでなくても上手い選手はいるということを証明しました。それまでブレードタイプが圧倒的に主流だったPGAツアーでも、「スパイダー」を使う選手が増えてきたのです。
決定的だったのは、2017年のマスターズでのセルヒオ・ガルシアの優勝です。文句なく、世界最高のショットメーカーであるガルシアは、デイも愛用するショートスラントネックの「スパイダーツアーレッド」を使用して、ウィークポイントであるパッティングを克服し、見事はじめてのメジャータイトルを獲得しました。
ショートスラントネックとは、短くて斜めのネックのこと。このネックを採用することで、フェース開閉が起きやすくなり、慣性モーメントが大きく鈍感なパターである「スパイダー」に程よく操作性を加えることが出来たのです。
ガルシアの優勝で、「スパイダーツアーレッド」は大ヒット。ツアーでも使用者が急増するほど流行しました。それ以来、「スパイダー」型はツアーで使用者の多い、定番形状となっていきます。そして、もうひとつ流行したのがショートスラントネック。これ以降、多くのパター形状にこの短いネックが装着され、操作性をより強調したモデルが登場しました。
プロ、アマ問わず流行し、それ以降のパターにも影響を与えた「スパイダーツアーレッド」。まさに名器と呼ぶのにふさわしいモデルです。