国内女子ツアー最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」の最終日、3日目を終え2位に3打差の首位で出た三ヶ島かなが逃げ切って初優勝を挙げた。そして注目の賞金女王争いは稲見萌寧が初の栄冠を手にした。月刊ゴルフダイジェストのツアー担当が白熱の最終戦をレポート。

「JLPGAツアー選手権リコー杯」最終日が行われ、昨年6月から始まった長い長いシーズンが終了しました。この試合で稲見萌寧選手が賞金女王に、古江彩佳選手がメルセデス・ランキング1位を獲得。そして、この試合を制したのは2018年にプロテストを合格した25歳の三ヶ島かな選手でした。

画像: 「JLPGAツアー選手権リコー杯」で初優勝を挙げた三ヶ島かな(写真は2021年のJLPGAツアー選手権リコー杯 写真/岡沢裕行)

「JLPGAツアー選手権リコー杯」で初優勝を挙げた三ヶ島かな(写真は2021年のJLPGAツアー選手権リコー杯 写真/岡沢裕行)

古江選手と三ヶ島選手の最終組でスタートした最終日、こちらは早い段階で古江選手が追いつき、そこから接戦になっていくのではないか……と予想していました。それだけ古江選手には気合いが入っている様子も見られましたし、『優勝しかみてない』といった雰囲気が漂っていたからです。それにもうひとつ、三ヶ島選手は今年、「ヨネックスレディス」では笠りつ子選手に、「エリエールレディス」では原英莉花選手に競り負けて苦汁をなめてきました。“勝ちそうで勝てない”というイメージがあったということもそう思った要因のひとつでした。

そんな中スタートした2人は、いきなり1番でお互いにバーディを奪い、「バーディ合戦になる!」と思ったのですが……その後、ぜんぜんスコアは動かず。フロントナインでは三ヶ島選手が1番のバーディ以外パーを並べ、古江選手も1番でバーディの後7番でボギーとしますが9番でバーディをとり、スコアとしてはスタート時と変わりません(予想が外れてばかりでした……)。

前半の三ヶ島選手のゴルフを見ていると、とても未勝利のプレーヤーとは思えないほど落ち着いていました。チャンスを逃しても、ピンチをしのいでも、終始柔らかな表情でプレーしていたのが印象的でした。その辺りは試合後、次のように話していました。

「朝イチは緊張していましたが、1日強い気持ちを持って、目の前の1打に集中しよう。そう思いながらプレーしていました」(三ヶ島)

そして勝負のサンデーバックナイン。三ヶ島選手は10番でバーディを奪うも11番でボギー。15番でもボギーとしてしまいます。しかし、16番でチップインバーディ、17番でもバーディを奪い2位との差を広げていったのです。

「15番では手が震えているのがわかりました。ティーショットを右にミスをして、2打目がバンカー。さらに目玉……『またダメなのかも』とも思いました。でも、16番でバーディを奪うことができて、悪い流れを断ち切ることができました」と話していました。終わってみれば2位と4打差。この日は一度も並ばれることなく初優勝を果たしたのです。

この一年で三ヶ島選手の印象はすごく変わりました。以前はミスショットに対して怒りを露わにすることもよく見られたのですが、今日はそんな素振り一切なし。戦いを楽しんでいるかのようにも見えました。「青木翔コーチのところでお世話になってから、笑うことが多くなった気がします。攻めることの大切さを教わったことで、バーディをとる楽しさを実感できました」と話すように、2年前から師事している青木コーチの影響があったようです。そこで、青木コーチに真意を聞いてみました。

画像: 青木翔コーチに2年前から師事しショット力を生かしたピンを攻めるゴルフで初優勝をつかんだ(写真は2021年のJLPGAツアー選手権リコー杯 写真/岡沢裕行)

青木翔コーチに2年前から師事しショット力を生かしたピンを攻めるゴルフで初優勝をつかんだ(写真は2021年のJLPGAツアー選手権リコー杯 写真/岡沢裕行)

「三ヶ島選手はもともとショット力が高いのに、パーを取るゴルフしかしていなかった。だからそこそこのスコアしか出せなかったんです。だから、『なんでもっと攻めないの? もったいない』と話しました。もっとショット力を信じてバーディを狙おう、と」(青木コーチ)

最終日の16番、バーディを奪ったシーンに集約されていると、青木コーチ。

「右のピンに対して、右サイドを狙っていったんです。グリーンから少しこぼれてしまいましたが、あれは攻めた結果です。その後のチップインは攻められたからこそ。その後の17番も短いミドルですが、ドライバーで思い切り打っていった。以前の彼女だったら間違いなく、16番はグリーンセンター方向に、17番は刻みを選択していたでしょう。すごく成長した部分だと思います」(青木コーチ)

もともと力がある選手が“攻める楽しさ”を知り、才能が一気に開花したというわけです。そして、会見の最後にこう締めくくりました。

「最後のパーパットを決めるまで、気を引き締めていました。優勝が決まっても、もっと勝ちたい、何勝もしたい。もっと気を引き締めていこうと思いました」(三ヶ島)

言葉通り、派手なガッツポーズはありませんでした。それは、もっと勝ちを重ねたとき、見せてくれることでしょう。“選ばれし者”のみが出場する試合で自らの力で勝利をもぎ取った三ヶ島選手。来年が楽しみです!

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