メジャー4勝のブルックス・ケプカがダンロップとの用具契約を交わしたという、ビッグニュースが舞い込んできた。今季はアイアンを「スリクソン ZX7」にしていたが、契約後にドライバーは「ZX5」となり、ボールも「スリクソン」に変わった。ウェッジはクリーブランドで、今後は松山英樹とともに同社の2枚看板となるだろう。
ケプカは2016年に当時契約していたナイキが、クラブ・ボール事業からの撤退を決めて以来、一貫してクラブ契約フリーを通していた。自分の気に入ったクラブを使うというスタンスで、それだけにそのクラブ選びは常に注目を集めていた。
2016年のナイキ契約時代のセッティングは、ドライバーとパター以外がナイキのクラブというもの。中でも3番アイアンの「ヴェイパー フライ プロ」は、現在もケプカが手放さずにほぼ愛用し続けている、ロングアイアンの隠れ名器だ。
ナイキが撤退したとき、米国ミズノゴルフの公式ツイッターが「ミズノはすべてのゴルファーに扉を開いて待ってるよ」と暗にケプカにメッセージを送ったエピソードは有名だ。そのツイートに呼応するかのように、ケプカは以降、ミズノのアイアンを使用することになる。
最初に使用したのは日本未発売の海外モデル、「JPX900ツアー」。ケプカの活躍もあってか、「JPX」ブランドへの注目が高まり、日本でも「JPX919ツアー」が限定発売され、昨年は「JPX921」シリーズが4機種発売された。日本では「ミズノプロ」ブランドがすでに展開されていたわけだが、いわば逆輸入されたかたちでの国内展開となった。
この時期のケプカは、ドライバーはテーラーメイド、アイアンはミズノを愛用し、立て続けにメジャーに4勝し、一気に世界のトップ選手へと躍り出た。使用したドライバーは、「M2(2016年モデル)」に始まり、「M3 460」、「M5」と毎年のようにテーラーメイドの最新モデルを使用して、その相性の良さを伺わせた。
この、ドライバーはテーラーメイド、アイアンはミズノという組み合わせは、ケプカにとって相性バツグンに思われたが、2020年は少し状況が変わってくる。ドライバーがキャロウェイの「マーベリックサブゼロ トリプルダイヤモンド」に変わったのだ。「SIM」ももちろん試したようだが、結果的にケプカに選ばれたのがキャロウェイだった。
2021年は、テーラーメイド「SIM2」ドライバーを使用することが多かったようだが、今度はアイアンが、ミズノからダンロップの「スリクソン ZX7」に変わった。このアイアンが気に入ったことが、長いクラブ契約フリーの時期を終え、新たにダンロップとの契約を選択した大きな理由になった。ひょっとしたら松山英樹のマスターズ優勝の影響も少しはあったかもしれない。
このシーズンオフ、ブライソン・デシャンボーとのスキンズマッチを制したケプカのセッティングは、ドライバーが「スリクソン ZX5」。長年愛用するテーラーメイド「M2ツアー HL」と「ヴェイパープロ」の3番アイアンはそのまま。アイアンは「スリクソン ZX7」アイアンだ。
ウェッジは、ナイキが撤退して以降、一貫して「ボーケイ」を使用していたが、クリーブランドに変更した。ボールもキャディバッグも「スリクソン」に変わり、メジャーに勝っていた時期のセッティングから大きく変わることとなった。
プロゴルフの世界では、ボールとクラブの同時に変えると良くないというジンクスがある。なにかミスや想定しない結果になったとき、その原因がボールを変えたことにあるのか、クラブによるものなのか、わからなくなるからだ。実際に、それでスランプになったトップ選手も存在する。ナイキ撤退以降、タイガー・ウッズがまずボールを決めてから、クラブ選びをしたというエピソードは有名だ。
しかし、タイトリスト→ナイキ→テーラーメイドと、ボールとクラブを同時変更しても結果を出し続けているローリー・マキロイを筆頭に、現代はそのジンクスに当てはまらない選手も少なくない。来年は「スリクソン」を手に活躍するケプカがみられるのではないだろうか。