「コロナ禍で安全に楽しめるスポーツとしてゴルフはうってつけと言われ、来場者が増えているのも事実です。しかしゴルフ場経営としては、企業様の接待ゴルフやコンペ、そして学生ゴルファーの合宿などがなくなってきており、必ずしも順風ではなく、今後の不安を覚えていたんです。そこで何かできることはないかと考え、プレー以外でゴルフ場を利用してもらえるサービスを検討していました」(木村氏、以下同)
このようにゴルフ場の現状を話すのは茨城県にある静ヒルズカントリークラブの新規事業を企画、運営する森ビル株式会社 リゾート事業推進室・木村充宏氏。屋外でおこない、かつプレーヤー同士が距離を保ちやすいゴルフは、いま世界的に人気を集めている。しかし、新型コロナウイルスが終息した”今後”を見据える必要があったというわけだ。
そこで同クラブはゴルフ場の役割を再定義し「ゴルフ外利用」サービスを複数新設。そのうちのひとつが一般向けにオープンした「キャンプ場」だ。
「もともと27ホールのゴルフ場だったものを改修して18ホールにしていましたが、使わないコースもある程度整備を続けていたんです。ですが、このまま何も使わないのはもったいないということで一般の方を対象としたキャンプ場を新設しました。『スノーピーク』さんのキャンプギアをはじめ、必要な道具はすべて揃っていますので手軽に楽しんでいただけるサービスだと思います」
同クラブは女子ツアー「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」の会場で、畑岡奈紗が育ったゴルフ場としても知られ、ゴルファーにとっても人気のコースで来場者数も多い。服装にもエチケットを必要とされるゴルファーと比較的ラフな格好であるキャンプ利用者が同じエリアにいることに違和感を覚える人も少なくないはず。何か対策や工夫をしていることはあるのだろうか?
「キャンプ場はご家族などで利用して下さるお客様も多く、ゴルファー以外の方がほとんどです。そのため、ゴルファーとの動線や時間帯を避けるなど調整をしています。とはいえ限界がありますから『グリーンには入らない』『ゴルフのプレーで使用するコースに入らない』などゴルフ場だからこその“ルールやマナー”を丁寧に伝えるように工夫しております」
また同クラブのキャンプ場ではゴルフ体験がプラン内容に入っており、プラスティック製のクラブを使用した「スナッグゴルフ」を楽しめる。大自然であるゴルフ場でキャンプした利用者からは「『今度はゴルフで利用したいね』という声もいただいており、これを機にゴルフに興味を持ってくれる方がいるのは嬉しいですね」と木村氏。
また同クラブはアウトドア用品などで有名なスノーピークビジネスソリューションズが展開する「CAMPING OFFICE(キャンピングオフィス)」の提携施設となり企業向けのサービスも提供開始している。
「コロナ禍でリモートワークが増えたことで社員同士のコミュニケーション不足を課題に感じている企業は多いはずです。そこで私たちは“非日常的な空間”として、対策の場を提供できたらと考えました。大自然のゴルフ場で社外研修としてテントを設営、アウトドアミーティングやBBQなどを通して社員同士の親睦を深め、いつもとは違う環境にいることで意見や新しいアイデアが生まれたら嬉しいですね」
BBQやキャンプなどレジャーとして楽しむ施設を導入するゴルフ場は増えているが、リモートワークが増えたことで抱える企業の課題に着目したゴルフ場はまだまだ少ないだろう。ゴルフ場で提供する「ゴルフ外利用」サービスは今後どのように進化していくのか、楽しみにしたい。
写真提供/森ビルグループ