昨年はコロナ禍の影響で20-21年のシーズンが統合されたためにQTは開催されませんでしたが、その代わりに21年のレギュラーツアーとステップアップツアーに出場できない選手のために、各大会の出場人数が増枠され、その増枠された分の出場権を争う増枠予選会が開催されていました。植竹希望、野澤真央、山路晶選手らがその増枠予選会でチャンスをつかみシード権を獲得しています。
シーズンが統合されたことで2年前のQTで上位に入って活躍した笹生優花、西村優菜、西郷真央、山下美夢有選手などもシード権を獲得し、13名の新シード選手が誕生し世代交代のシーズンとなっています。そして来季の出場順位を決定する21年のQTでも上位に今年行われた2回のプロテストで合格したばかりの若い選手が躍動しています。
20年のプロテスト合格組からは12位小倉彩愛(21歳)、13位桑木志帆(18歳)、14位佐久間朱莉(18歳)、17位後藤未有(21歳)、23位阿部未悠(21歳)、26位内田ことこ(19歳)、30位上野菜々子(21歳)、21年組からは5位永嶋花音(20歳)、11位佐藤心結(18歳)、32位天本遥香(25歳)とプロテスト合格組みから多くの選手が来季のツアーにデビューすることになります。
スタンレーレディスで渋野日向子選手らとプレーオフに残った佐藤心結選手など、どの選手も開幕戦から注目しなくてはならない選手ばかりです。
いっぽうでシード権復活をかけて挑んだ下川めぐみ(1位)、川岸史果(3位)、福田真未(8位)、東浩子(15位)、新垣比菜(19位)、安田祐香(20位)、横峯さくら(21位)、藤本麻子(28位)とツアーでの経験を生かし2日目に強風が吹いた難しいコンディションを乗り越え来季の出場権を獲得しています。中でも米女子ツアーのシード権も保持する横峯さくら選手は、出場権を確保できたことで来季は国内ツアーに専念しママさんとして永久シード権獲得を目指すと語りました。
QTではトーナメントと違った戦いにくさや、戦術もあります。QTでの順位は来季の出場優先順位になりますが、30位くらいまでは恐らく開幕戦から前半戦は出場できるので1位も30位もあまり変わりはありません。従って3日目を終えて上位に位置している選手の場合、リスクを冒してピンを攻めるというよりもスコアを崩さないようなマネジメントの割合が多くなってきます。しかし、順位を上げなければならない選手の場合は、ピンを攻める勇気とマネジメントが必要となります。とくに最終日に関してはスコア順に組合せられるのでスタート時点での順位は確認できるものの、途中にスコアボードも置かれていないためアテストするまで実際の順位は確認できません。自分の順位を気にしながらのプレッシャーの中で戦い終えた上位選手はホッとした表情を見せ、下位でステップアップツアー行きが決まる選手は課題を見つけそこから這い上がるんだと前を向いて会場を後にします。
しかし、QTですべてが決まるわけではありません。2018年のQTで40位だった渋野日向子選手は、開幕戦には出場できなかったもののその後の活躍はご存じの通り。QTランク103位から推薦出場で成績を残し初優勝とシード権を獲得した稲見萌寧選手や、ステップアップツアーで優勝しレギュラーツアーでも活躍しシード権を確保した原英莉花選手など圏外からチャンスをつかみ取る選手も毎年確実に存在します。
そういう意味でも圏外の選手で私が注目するのは、21年のプロテストをトップ合格した作陽高校(岡山県)出身の18歳尾関彩美悠選手です。最終日にスコアを崩してしまい58位となりましたが、優勝を目指してプレーする試合と違ってQTならではの気持ちの持ち方やマネジメントの難しさも経験したことでしょう。来季はステップアップツアーで経験を積みながらレギュラーツアーに出場するチャンスを得た際にはしっかりと上位に顔を出してくるのではないでしょうか。
上位30位や35位くらいまでの順位で終えた選手はひとまず前半戦の出場権を確保できたことになりましたが、来季もシード権を争う過酷な戦いが待っています。開幕戦から目が離せないシーズンになりそうです。
写真/岡沢裕行