国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の最終日、1打差の首位で出た谷原秀人が逃げ切って今季2勝目(通算16勝)を飾った。最後まで混戦になった模様をプロゴルファー・中村修がレポート。

「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の開催される東京よみうりCC。速く硬く仕上げられたグリーンが、ただでさえ傾斜でラインを読みづらいグリーンの難易度を上げます。昨年も18番パー3、名物ホールのスコアで優勝が決まる展開の中、谷原秀人選手は3パットのボギーで優勝を逃していました。
そして今年、2位の宮里優作選手に2打差で最終ホールを迎えた谷原選手は、昨年の経験を生かしグリーンまで届かないクラブでティーショットを打ち、ピン手前からアプローチを寄せ、パーで優勝を手にしました。5年ぶりの優勝となった「三井住友VISAマスターズ」の優勝会見でも最終戦の18番ホールについてその難しさを口にしていました。

画像: 国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を制した谷原秀人(写真は2021年のゴルフ日本シリーズJTカップ)

国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を制した谷原秀人(写真は2021年のゴルフ日本シリーズJTカップ)

谷原選手の優勝には3つの要素が噛み合ったことにあると考えます。ひとつはスウィング改造です。欧州ツアーを転戦してきた経験からスウィングを模索し、吉田直樹コーチと二人三脚で自分にマッチした安定感がありコントロール性の高いショットを作り上げて来ていました。10月末の「ISPS HANDA ガツーンと飛ばせ ツアートーナメント」から好調の波に乗り「三井住友VISAマスターズ」で優勝を遂げています。

画像: スウィング改造で向上したショット力と冷静沈着なプレーで優勝を手繰り寄せた(写真は2021年のゴルフ日本シリーズJTカップ)

スウィング改造で向上したショット力と冷静沈着なプレーで優勝を手繰り寄せた(写真は2021年のゴルフ日本シリーズJTカップ)

ふたつ目はパッティングです。欧州ツアーで転戦する前に使っていたセンターシャフトのパターを引っ張り出して使ってみるとプライベートのラウンドで11個のバーディを獲ったといいます。欧州ツアーでは荒れたグリーンも多く、手が動かなくなる症状が出始めたところでパターを別のモデルに変えていたようです。日本の特に速く硬いグリーンで谷原選手本来のパッティングが戻ってきていました。「三井住友VISAマスターズ」でも最終ホールの優勝を決めたバーディパットは非常に印象的でした。同組の池村寛世選手は14番と17番で痛恨の3パットで優勝争いから脱落してしまいましたが、1打を争う展開の中13番、16番、17番と確実にパッティングを決めた谷原選手のパット力の高さが光っていました。

画像: 1打を争う優勝争いの中、硬く速く傾斜のあるグリーンで確実にパットを決めた(写真は2021年のゴルフ日本シリーズJTカップ)

1打を争う優勝争いの中、硬く速く傾斜のあるグリーンで確実にパットを決めた(写真は2021年のゴルフ日本シリーズJTカップ)

最後のピースは冷静さです。もちろん、ツアー2勝のプロゴルファー・谷口拓也がキャディを務め、息の合ったコンビの力も大きいと思います。「三井住友VISAマスターズ」でも今大会でも優勝争いの中で周りがよく見えていました。前半では池村選手が中盤では宮里選手がスコアを伸ばす中、冷静に自分の流れを待ち、13番のバーディで優勝への扉をこじ開けました。浮足立つような場面が続く中であれだけ冷静にゲームの流れを読み、自分の流れを待てる点はスウィング面をサポートする吉田直樹コーチも谷原選手のすごさのひとつだと太鼓判を押します。

今大会で注目されていた賞金王の行方ですが、チャン・キム選手を追った木下稜介、金谷拓実、星野陸也選手は残念ながら届かずにチャン・キム選手が初の賞金王に戴冠しました。金谷選手、星野選手は最終ホールで素晴らしいショットからバーディを奪い見せ場を作りました。金谷選手は賞金王にはなれませんでしたが世界ランキングが49位となり来年のマスターズ出場に向け、大きく前進しました。

最後に歴史ある最終戦の舞台を整えた東京よみうりCCの大橋敬之統括グリーンキーパーを紹介させて下さい。水曜日の未明から降った大雨の影響で1年をかけて準備してきた舞台が台無しになるところでした。大橋キーパーを始めとしたコース管理のみなさんの力がサンデーバックナインのドラマを演出してくれました。開催されるどのコースも同じような苦労があるとは思いますが最高の舞台を用意するグリーンキーパーやコース関係者には私たちからも感謝を伝えたいと思います。

男子ツアーも世代交代の波が押し寄せ若手のシード選手が多く誕生しています。来シーズンの男子ツアーに引き続き注目していきましょう。

写真/姉崎正

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