前日まで大会の主役はコリン・モリカワだった。欧州ツアーの最終戦に勝ちアメリカ勢として初のヨーロッパ年間王者に輝いた彼は勝てば世界ランク1位。大会が開催されたバハマでフィアンセにロマンチックなプロポーズも済ませた彼は3日目を終え後続に5打差をつける圧勝ペース。
ところが最終日は前半2つのダブルボギーを叩いてリードを失うと、サンデーバック9で2連続イーグルを奪ったホブランに6打差をひっくり返され逆転負け。奇しくもビーチサイドのヴィラを一緒に借りて宿泊していたモリカワとホブランの日曜日は明暗を分ける格好となった。
優勝インタビューで「今日は(敗れた)彼にどんな声をかける?」と問われたホブランは「じつは僕らあまりゴルフのことは話さないんです。でもコリンは優勝を喜んでくれると思います。自分のスコアや成績に関係なく相手のナイスプレーを喜んでくれるのが、彼の素晴らしいところだから」。
プロポーズのタイミングもモリカワから相談されていたそうで、ジュニア時代からライバルとしてさまざまな舞台で競い合い19年秋にプロデビューした同期(2人とも24歳)は固い絆で結ばれている。
ホブランはPGAツアーでは珍しいノルウェー出身。いま頃故郷は雪に閉ざされゴルフ場もすべてクローズ。半年間は屋外でのプレーができない北欧出身だというのになぜか優勝はトロピカルリゾートが舞台の試合ばかり。それゆえ人呼んで“リゾートキング”。
これまでのツアー3勝はメキシコのビーチリゾート、マヤコバ(2勝)とカリブ海のプエルトリコ(1勝)で挙げており、今回もやはり南国バハマでの勝利に「生まれ育った場所とは全く違う環境の大会で相性が良いワケ? それは自分にもわからない」と嬉しい誤算に喜色満面だった。
「前半は優勝のゆの字も浮かんでいなかった。でも6番から3連続バーディを奪って9番でリーダーボードを見たらトップに並んだか1打差だか、とにかく上位争いに絡んでいた。バック9でいいプレーをすれば(優勝の)チャンスはあると思った」とホブラン。
圧巻は14番パー4、グリーンサイドバンカーからのチップインイーグル。「ボールも沈んでいて難しい状況だった。普段なら球を上げてその重さで勢いを止める打ち方をするんだけれど、傾斜もあったので転がってしまうと思った。フェースを開いて素早く砂を切るように打ったショットがジャストタッチでカップに入ってくれた。あれが今日のハイライト」
続く15番(パー5)でもイーグルパットを捻じ込み勝利を確実にしたホブラン。「コリン(モリカワ)もきっと(この敗戦の経験)来年はもっと強くなって帰ってくると思う」とライバルを思いやったホブラン。同級生が紡ぐ伝説はこれからが本番だ。