日本の男子ツアーで長尺パターといえば片山晋呉を思い出す人も多いと思うが、直近でいえば宮里優作も投入している。11月に開催されたダンロップフェニックスから「スコッティキャメロンFUTURA X」の44.5インチの長尺パターを使用し、その効果は絶大。同大会から4位、2位、2位と最終戦「日本シリーズJTカップ」でも活躍し、来シーズンへ弾みをつけた。
アマチュアゴルファーにとって長尺パターはあまり馴染みがないものだが、ショーン・ノリスや横田真一らは10年以上長尺パターを愛用している。いったい長尺パターのメリットはどんなところにあるのだろうか?
長尺パターを使用したこともあり、パターマニアのプロゴルファー・早川佳智にメリットを聞いてみると「ふたつあると思います」という。
「ひとつ目は長尺はドライバーほどの長さがあるため、直立に近い姿勢でパッティングしますから“後方からラインを読むとき”と“アドレスしたとき”の感覚のズレがないことがメリットとして挙げられます。そしてもうひとつは『ストロークのことを考える感覚がない』ことだと僕は思います」(早川)
宮里が使用するのは44.5インチ、ノリスは45.5インチ、横田は45インチとドライバーほどの長さを持つパター。ラインを読んでアドレスに入った時に目の高さが変わらないため、視界の景色が変わりにくく、自分が決めたラインに集中でき、迷うことが少なくなる。ちょっとした違いかもしれないが、アドレスの違いが大きく結果を左右する要因となるというわけだ。
さて、気になるのはふたつ目の「ストロークを考える感覚がなくなる」という点。
「アンカリング規制がありますから、体に固定して支点を作ることはできません。ですが、片手(左手)が支点となりもう一方の腕(右手)だけでパターを操作することができますよね。つまり、短尺に比べて左手の運動量が少なく、動きがシンプルになります。そのため、テークバックやストロークのことを考えずに“ライン読み”や”タッチ”に集中できるんです」
そして約20年前から45インチと長尺パターを使用するプロゴルファー・横田真一はこう話す。
「僕はイップスがきっかけで長尺パターを使用するようになり、パッティングのストレスがゼロになりました。最初は違和感ありましたが、3日練習してすぐ試合投入したら7バーディとれたんですよね。それも左手を支点としてストロークでき、打ち方を考えるストレスがなくなったことでラインを読むことに集中できましたからだと思いますね」(横田真一)
また今季「日本オープン」を制したショーン・ノリスは約10年前から長尺パターを愛用している。母・ジョアンさんに「ロングパターを試してみたら?」とアドバイスを受けて挑戦してみたところ、これがドンピシャだったそうだ。それから2週間後の南アフリカツアーで優勝するなど、ノリスも長尺パターの恩恵を受けたうちのひとりと言えるだろう。
パット・イズ・マネーという言葉があるようにプロゴルファーにとってパッティングは極めて重要。だからこそ多くのプロが悩み、苦しみ、時にはイップスにまでなってしまう。そんなグリーン上のストレスをなくしてくれるのは、長尺パターの大きいメリットということだろう。
アマチュアゴルファーにとって馴染みはないが、パターに悩んでいるゴルファーは一度手に取ってみるのもいいかもしれない。