右に出て右に曲がるプッシュスライスの軌道はインサイドアウト⁉
さてここで問題です。画像Aのトラックマンでの数値を見てどんな弾道が出たのか想像してみましょう。――クラブデータを見ると軌道(クラブパス)はインサイドアウト4.5度、フェース向き(フェースアングル)は9.2度オープン、入射角(アタックアングル)は1.9度ダウンブローとなっている。その結果のボールデータを見ると、スピン量は3027rpm、スピン軸(スピンアクシス)は10.8度右に傾き打出しはターゲットよりも右に打ち出されていることがわかる。
答えとなるのが画像B。この画面を見ると、右に打ち出され、さらに右に曲がるプッシュアウトの弾道が映し出されている。つまりこの弾道のようなミスが多いゴルファーは、アウトサイドイン軌道のスライスではなく、インサイドアウト軌道のスライス。入射角がダウンブローでインパクトでフェースが開く打ち方をしていることがトラックマンのデータから分析できる。
「ここで見てほしいのは、フェース向きが打ち出し方向を決め、軌道とフェース向きの関係が弾道を決めるところです。インサイドアウト4.5度の軌道に対してフェースが9.2度オープンということは軌道に対して4.7度開いている(フェーストゥパス)になるので、右から右へ曲がる弾道になっているのです」(小島慶太)
では、このタイプのスウィングで改善すべき点は? というとなんと軌道を改善するのではなく入射角だと小島はいう。
「ドライバーの場合は入射角がマイナスになるとスピン量が増えて飛距離が出ない原因になります。そして『クラブパス』は『入射角』の影響を受ける数値で、概ね『スウィングダイレクション』から『入射角』を引いたものになります」
そこでまずは「入射角」を改善すれば「スウィングダイレクション」、「クラブパス」も改善されるというのが、トラックマンマスターの資格を保持する小島の意見だ。
そしてこのタイプのスウィングを見てみると、ダウンスウィングで腰が前に出て右足のかかとも早く上がり前傾角が崩れているケースが多いという。そのことによってインパクトでフェースは開き、入射角も上から入り過ぎる傾向があるという(画像C)。
スマホで後方から動画撮影することでチェックすることがいちばんの方法だが、壁にお尻をつけて素振りしてみることでも体感できると小島。
「クラブを持たなくていいので、壁にお尻をつけて素振りをしてみるとお尻が壁から離れてしまう人は要注意です。腰が前に出て前傾が崩れると手元の通り道が塞がれてしまい、クラブを必要以上に寝かしたインサイドアウト軌道でフェースが開く原因になります(画像D)」
タイトリストの提唱する体の動きにフォーカスしたインストラクター資格である「TPI」のレベル3をもつ小島の「プッシュスライス」の改善策は、ドライバーを逆さまにしてグリップエンドを地面につけ下半身の動かし方を体感するツイストドリルだ(画像E)。
「このドリルで上半身と下半身を分離させて動かすことで下半身の力を使って回転力に変換する使い方が体感できます。肩のラインは動かさずにベルトのバックルを右、左へと動かように繰り返すと股関節周りの硬さをほぐしながら下半身を正しく使うことで、前傾をキープしたスウィングへと導いてくれます」
ミスショットの弾道からスウィングのメカニズムをトラックマンを使って分析し、右から右へのプッシュスライスのスウィングの傾向とその改善法を教えてもらった。ツイストドリルは股関節周りの柔軟性が失われて硬くなっている体の制限を解消してくれるし、ダウンスウィングで下半身を使おうと間違った力の入れ方を改善もしてくれる。早速試してみよう。