—―飛距離に関する飛びの3要素は「ボール初速」「打ち出し角」「スピン量」と言われております。ドライバーの長さが規制されると、重要になってくるのはヘッドスピードではなく「ボールスピード」。つまりヘッドスピードはいまのままで、どうやって「ボール初速」を上げるかが、いまよりも重要になってくると思います。
松尾 ボール初速は速いほうがいい、確かに重要な要素でありますが、ひとつの要素だけでは飛距離は伸びません。ひとことでいうと、先ほどの3要素はすべてが絡みあって飛距離を生み出します。
たとえば、「打ち出し角が上がるとボール初速は下がります」。「打ち出し角が下がるとボール初速は上がります」。それでは「ボール初速」を上げるために低く打ち出せばいいかというとそうではありません。理論上はそうですが、ヘッドスピードが遅いシニアの方が低く打ち出したとしたら、今度はキャリーが出ずに飛距離は落ちるでしょう。
逆にヘッドスピードが速い人が低く打ち出したほうがボールスピードが上がるからといって低く打つと今度は「スピン量」が増えます。「スピン量」が増えるとこちらも飛距離は落ちます。
「スピン量」は少ないほうが飛距離は出やすくなりますが、これもヘッドスピードや「ボール初速」に対してどれも適正値があるということです。
—―ゴルファーのヘッドスピードや打ち方により、MAXの飛距離を生み出す「飛びの3要素」の適正値があるのはわかりました。でも決められたルールの範囲内でメーカーの開発陣はギリギリまで初速性能を上げ、ゴルファーも確かにそれを体感でき、飛距離を伸ばしてきた背景があります。ではもし「ボールスピードが大事です」と言われた場合、ドライバーを選ぶとき、何を見て購入すればいいのでしょう?
松尾 クラブ長さとヘッド重量とのバランスをよく考えることです。確かに、ロボットテストではヘッド重量が重いほうがボールスピードは速くなりますが、実際の人間では、ヘッドの速度(クラブの長さ)との兼ね合いがあります。今度はあまりにクラブを短くしてヘッドスピードが遅くなってしまうと、重いヘッド重量効果の割には、「ボールスピード」は速くなりません。
—―ボールスピードが速かったなと感じるドライバーはありますか?
松尾 今年でいうなら個人的には、「キャロウエイEPIC MAX LS」、「コブラRAD SPEED XD」、「タイトリスト TSi4」、「オノフ KURO」、「ホンマ GS PROTO 2」ですね。
—―ゴルファーとしては、どうやったら「ボールスピード」を上げることができるのでしょう?
松尾 技術面でいえばフェース面上のスウィートスポットでインパクトすること、つまり芯を食うことです。クラブでいえば簡単なのは振りにくくはなりますが、今の長さのまま、今よりも重めのヘッドを使うことです。そしてさきほどいった通り、打ち出し角度を低くするほうがボールスピードは上がりますので、ちょっと難しくはなりますが、いま使っているロフトが10.5度なら9.5度を使うことですね。ベストな方法は、ちょい短めのクラブ、ちょい重めのヘッド、フェース面上ののスイートスポットで芯を食って、あまり高く打ち出さず、バックスピンが少なめの弾道を打つことです。
つまりPGAツアーの選手たちのショットということになりますね。