「長くチャレンジングな1年でしたがPNCチャンピオンシップに息子チャーリーと出場することで締めくくれるのはとても感慨深いです。父親としてプレーできることに興奮と誇りを感じています」と12月9日、SNSに綴ったタイガー。
20人のメジャー優勝者が子供・孫あるいは親とタッグを組み対決する大会ではカートの使用が許されティーショットは息子に任せることができるため事故後体調が100パーセントではないタイガーにとって負担が少ない。世間の期待に応えるため、そして最愛の息子にチャンスを与えたいという父の思いから出場の決断に至ったようだ。
思えば事故後初めて松葉杖なしで歩く姿が報じられたのはチャーリー君のジュニアの試合を観戦したときの画像だった。のちにタイガーは米ゴルフダイジェストに「息子のプレーをチェックするために出かけた」と認めた上でこんなことを語っている。
「(チャーリー君が)あり得ないほど悪いスコアで回ってくることがあったのでその原因を探るために試合を見に行ったんです。全体としてはいいゴルフをしていたのに1ホールだけ悪いホールがありました。すると彼は怒りをあらわにした。で、気持ちを切り替えることなく次のショットもまた次のショットもイライラしたままプレーしていたのです。それを見てこう諭しました。“ミスして怒るのは構わない。でもそれを引きずるのは絶対にいけない。次のショットに100パーセント、コミットしなさい。頭に血が上るほど怒った次のショットこそ、人生で一番重要なショットなのだよ。それがわかるようになればもっと上手くなれる”と。そのあとの夏の大会で彼は随分良い成績を出すようになりました」
右脚の複雑骨折、あるいは粉砕骨折は複数箇所に及んでおり専門家はスウィングの際、無意識に脚をかばうことで膝や腰に痛みが生じ、地面の起伏がさらにその症状を拡大するというが、本当のところはタイガーにしかわからない。
ベン・ホーガンは夫人とのドライブ中、バスと正面衝突し生きていたのが奇跡といえるほど車は大破。しかし11カ月後カムバックを果たし翌年の全米オープンで優勝を飾っている。
「これからはミスター・ホーガンのように試合を選んでプレーすることになる」というタイガーが事故後10カ月足らずで復帰戦に選んだのは息子と二人三脚で挑む競技。
「タイガーが一番目に望んでいることはプロとしての復活ではなく父親でいること」と言ったのは仲の良いリッキー・ファウラー。タイガーにとって一番の良薬は息子の成長を目を細め見守ることなのかもしれない。