「アルプス」のデザインを簡単に表現するとティーイングエリアから見て、フェアウェイが山のように高く盛り上がり、その先が見えない形状のホールをいいます。
「アルプス」でもっとも有名なホールといえば、1860年に第1回全英オープンが開催されたスコットランドのプレストウィックGCにある5番ホールです。このホールはパー3で距離は206ヤードですから、かなりハードなパー3といえます。このホールがアルプスの原点といわれています。グリーン面が見えないことはプレーヤーの姿も見ることができないことからグリーン脇に鐘があり、ホールアウトして次のティーイングエリアに向かう前にカランカランと鳴らして後方の組にグリーンが空いたことを知らせるようになっています。
ほかのコースでいうと、やはり全英オープンが開催されるイングランドのセントジョージスGC、通称サンドイッチにもアルプスタイプのホールがあり、こちらは4番ホール/495 ヤード/パー4の左ドッグレッグでやはりタフなホールです。1打目の打つ方向は視認しにくく、正面に壁のように立ちはだかる部分にバンカーがそびえているというデザインになっていて、このバンカーの愛称は形状からヒマラヤバンカーと呼ばれています。もちろんミスショットをすればこのバンカーに打ち込むことになり、急斜面のためアドレスもままならない状況に陥ってしまうことになります。
日本でも日本最初のゴルフコース、神戸GCにもアルプスホールがあり、5番ホール/190 ヤード/パー3です。ティーイングエリアから見ると目の前に小山がそびえ、その頂点に方向を示すポールが立てられていて、グリーンはその小山を越えた真下にあります。通称「ドクターの頭」といわれているホールです。
御殿場にある赤星四郎が設計し1958年開場の富士CCの12番ホール/400ヤード/パー4もこのアルプスといえるホールです。ティーイングエリアから眺めるとまるでドーバー海峡のようにフェアウェイがそびえ、ゴルファーを拒否しているような錯覚すら覚えます。ホールの高低差は最大約36メートル、壁は31メートルの高さがありますから10階建てのビルを飛び越して打つことと同じです。つまり相当な打ち上げですね。乗用カートがない時代、このホールを歩いて登っていましたからミスした時などは本当に辛い思いをしたものです。