プロキャディに2021年を振り返ってもらう年末年始企画。その第5弾は宮里優作の同級生であり石川遼、イ・ボミ、渋野日向子のキャディを務める”シュガー”こと佐藤賢和キャディ。21年の印象に残った試合を振り返ったインタビューをお届け。
佐藤賢和キャディは東北福祉大時代は宮里優作と同級生で、数々の男子ツアーの選手キャディを経験し近年は石川遼のエースキャディとしても活躍している。女子ツアーでもイ・ボミや渋野日向子のキャディを務め選手のポテンシャルを上手に引き出す名キャディのうちのひとりだ。
22年シーズンは小鯛竜也、石川遼、宮里優作らの復活のシーズンになる
2021年を振り返ってもらうと、まずは男子ツアーでは「マイナビABCチャンピオンシップ」で初めてキャディを務めた小鯛竜也が印象に残っているという佐藤キャディ。小鯛は2017年の同大会で優勝を果たすも18年は賞金ランク62位、19年は57位とポテンシャルは秘めているものの苦しんだシーズンが続いていた。そして20-21シーズンもさまざまなことに悩みきっかけをつかめずにいたという。
「最終的には13位タイで終えたのですが、そこからきっかけをつかんでシードをつかんでくれたのが本当に嬉しかったですね。彼はイケメンだし活躍して男子ツアーを盛り上げてくれる選手のひとりですよね」(佐藤キャディ)
不調の原因をスウィングにあるとしてしまいスウィングと戦ってしまうものだが、シード圏内の選手の場合そのほとんどはスウィングの問題はほんの些細なことできっかけが大事だと佐藤キャディ。浮上のきっかけをつかめずにいた小鯛であったが、佐藤キャディから見ても練習場や練習ラウンドではスウィングに問題点は見つからなかった。だがあえてひと言伝えたものが懐の深さだったいう。
「プロゴルファーでさえテークバックやフォローで手の位置がどうとか、そういうことばかり気になるものですが、『前傾が少し崩れるタイプだからもう少し懐が欲しいね』とそこを意識してやってみたらと話しをしたらそれがハマって、いいきっかけになってくれました」(佐藤キャディ)
小鯛の素直な性格やゴルフに対する真面目なところも大きいと佐藤キャディは振り返るが、佐藤キャディの選手のポテンシャルを上手に引き出すキャディっぷりを表すエピソードではないだろうか。小鯛は「ダンロップフェニックス」でも20位タイに入り、賞金ランク65位でギリギリシード権を確保している。
もうひとり、男子ツアーからはやはり石川遼の話しも聞きたいところ。スウィング改造に踏み切りここ数年その成果が問われているが、佐藤キャディの目にはドライバーの曲がり幅は圧倒的に少なくなりその成果は表れていると話す。
「林の中から打つ回数は圧倒的に減っていますね(笑)。アイアンに関してはもともとかなり高いレベルにありましたが、悪かったのはドライバーですよね。それが悪かった頃の体験の蓄積から解放されて攻められるホールも増えて来ていますし、ホールによっては左を向いてアライメントを広く取りフェードで打てるようにもなって来ていました。スウィング改造は成功していると思います」(佐藤キャディ)
米ツアーの挑戦は残念な結果に終わった石川遼だが、3勝を挙げた2019年以来の活躍が期待できると佐藤キャディはいう。さらに今季終盤は谷原秀人、宮里優作のベテラン勢の活躍で来季は若手とベテラン、中堅とのバランスが益々男子ツアーを盛り上げる大きな要素になると語ってくれた。
2022年の女子ツアーで活躍できるのは声援を力に変換できる選手
女子ツアーでは渋野日向子のキャディとしてともに戦ってきた佐藤キャディだが、3月の「アクサレディス」、海外メジャー「ANAインスピレーション」、「スタンレーレディス」で久しぶりの優勝を果たした翌週の最終日が悪天候で中止になった10月の「富士通レディース」と振り返ってもらった。
2日目を66でプレーして首位の勝みなみ、古江彩佳に1打差の単独3位で終えていた渋野日向子だったが最終日は悪天候でラウンドは中止となり、首位で並んだ勝みなみと古江彩佳2選手による3ホールのプレーオフで優勝者を決めることになった。
「『富士通レディース』は最終日やりたかったですね。多少疲れが貯まっていましたし調子もそれほどよくはなかったですが、前週ハウスキャディさんで勝っているので今週プロキャディで予選落ちしたとかなると顔にモザイクかけて欲しくなりますからね(笑)」(佐藤キャディ)
3月の「アクサレディス」と海外メジャー「ANAインスピレーション」でキャディを務めた佐藤キャディ。その頃はまだドライバーだけでなくアイアンも飛距離が出せずに苦しんでいたと話す。
「『ANAインスピレーション』はグリーンも硬い上に砲台が多く、ミドルアイアンより上の番手で打たされることも多く、スピン量も不足していて150ヤードでも思ったところに止められない状況でした。その頃は本当に苦戦していました。でも7月の『大東建託(いい部屋ネットレディス)』、『富士通レディース』とキャディをしたのですが、富士通ではドライバーも飛んで来ていましたし、6UTを入れたこともあり大きく変わって来ていましたね。この飛距離があったら強いなと思いましたね」(佐藤キャディ)
5番アイアン代わりに入れていたモデルの異なる6番アイアンから6UTにチェンジした際には、「ANAでなぜ入れなかったのかと聞くと「なんでそのとき言ってくれなかったんですか?」と返されて、言っても聞く人じゃないでしょと、今では笑い話になっていると佐藤キャディ。
飛距離が伸びてきたことでアイアンでのスピン量も確保され、グリーンで止められるようになったことでも強さを感じていると佐藤キャディ。21年の開幕で大きなスウィング改造を施し飛距離も落としながらも貫いて結果にむずびつけてきた渋野日向子についてそのメンタルの強さだけでなく、ボールストライキングのセンスも非凡なものがあると佐藤キャディ。来季は会場は変わらないが「ANAインスピレーション」から「シェブロンチャンピオンシップ」に名称変更されるメジャー初戦でのリベンジを誓う。
来季の国内女子ツアーに話すを戻すと、これまでの2年よりも有観客試合が増えてくることで勢力図も変わる可能性があると続ける。
「若い世代もゴルフが上手いのは間違いありませんが、試合勘というか見られる緊張感の中でギャラリーの声援を力に換えられる選手がどれだけ出てくるのか見たいですね」(佐藤キャディ)
ギャラリーの声援を自分の力に変換して活躍する松山英樹、石川遼、上田桃子、シン・ジエ、渋野日向子、古江彩佳などを見てきた佐藤キャディの言葉は、選手たちやプロキャディが来季にどんなドラマを見せてくれるのか期待させてくれるものだった。3月の開幕が待ち遠しいばかりだ。