松山英樹が優勝したマスターズで2位に入り一躍脚光を浴びたウィル・ザラトリスにとってもっとも思い出深いのが09年、13歳のクリスマス。ツリーの下に置かれたプレゼントをすべて開けたがサンタに頼んだものがない。
「新しいアイアンセットがどうしても欲しかったんです。それまで使っていたのは溝がすり減って8番から下はそれこそ溝ゼロ。プレゼントを開け終わったとき父がこう言いました。雨が降る前に落ち葉を掃いてしまいなさい、ってね。で、熊手を取りに行くとそこに箱があった。中身は新品のアイアンセット! タイトリストの『712 MB』でした。あれは忘れられないなぁ」
元世界ナンバー1、ルーク・ドナルドにも同じような体験がある。12歳のルーク少年にサンタが届けてくれたのがアイアンセット。「人生初のアイアンのフルセット。しかもセベ(バレステロス)のクラブでした。最高なんてものじゃなかった」
ジャスティン・トーマスの思い出はこうだ。「何歳だったか忘れたけれど、クリスマスの日に床に座ってプレゼントを開けていたらソファーの下に箱があるのに気づいたんです。引っ張り出してみたらスコッティキャメロンのパター。今でもそれは持っています。最高にイケてる贈り物でしたよ」
ケビン・ナの思い出はプロになってからのこと。11年のクリスマスに届いたプレゼントの箱を開けると涙が溢れたというのだが、その訳は?
01年にプロ入りした彼は05年の全米プロでメジャーデビューを果たす。そのとき彼が自分に課したのが、出場したメジャーの優勝者のサインが入ったピンフラッグをコレクションするというミッション。11年にはサイン入りフラッグのコレクションが10枚に達していた。
しかし1枚だけ足りないフラッグがあった。メジャー初出場した05年バルタスロールで優勝したフィル・ミケルソンのサインが入ったフラッグだ。出場するたびフラッグの数は増えるが肝心の1枚が足りない。やるせない思いを抱えたナの心を満たしたのが相棒(キャディ)ケニー・ハームス。
「ケニーがオークションサイトでミケルソンのサイン入りフラッグを落札してくれたんです。多分400ドル(4万円強)くらいしたと思う。箱を開けた途端込み上げてくるものがありました。そこに愛情が詰まっていたから」とナ。今ではフラッグのコレクションが41枚まで増えたという。
そして21年のクリスマス、ナは自身のSNSに22年のマスターズ招待状の写真をアップ。「ゴルフ界で最高の招待状! このクリスマスプレゼントが欲しかった」とコメントした。
ハリス・イングリッシュも初優勝した13年のクリスマスに届いた招待状が忘れられないという。「届くのを忘れていて、パッと見、結婚式か何かの招待状かと思ったんです。裏を返したらオーガスタから。心臓の鼓動が一気に早まりました。あれは最高だったな」
ゴルファーにとってこの時期に届くマスターズの招待状は生涯忘れられない贈り物になる。