昨シーズン、ミケルソンがベスト10入りしたのはわずか1試合。その1回が5月の全米プロでの優勝なのだからやはり稀有な存在だ。51歳直前の彼はブルックス・ケプカらを下し史上最年長メジャーチャンピオンに輝いた。1986年に奇跡といわれたマスターズでのジャック・ニクラスの優勝が46歳。ツアーのレベルが上がり若手が台頭する今ミケルソンの優勝はニクラスの奇跡を上回るといっても過言ではない。
アリゾナ州立大学在学中の91年、PGAツアーのノーザンテレコムでアマチュア優勝を達成したから今年でちょうど30年がたった。2月23日の自身のツイッターには「あれから30年。すべてはこの大会から始まった」と題し暖炉の前でそのときのトロフィーを眺めながら感慨深げに語る動画をアップしている。
タイガーが事故を起こしたのはまさにその日。ミケルソンは翌週チャンピオンズツアーに出場すると最終日に赤のウェアで登場。普段は黒もしくはグレーなどモノトーンのウェアを着ることが多いミケルソンにしては珍しいこと。
するとインタビューで「タイガーに敬意を表す気持ちで(彼のトレードマークの)赤を着て来た」と説明。「彼のゴルフ界への貢献は誰もが認めることだし皆が感謝している。これを着てタイガーをサポートする気持ちを表したかった」
「赤を着るのは初めてだし、そもそも赤いシャツを自分は一枚も持っていなかった。だから特別に一枚買いましたよ(笑)。気持ちが彼に伝われてばいい」。かつては犬猿の仲といわれた2人だが時を経て相手を思いそれを形にするようになった。ミケルソンの笑顔にこちらもつられて笑顔になってしまいそうだった。
チャンピオンズツアーでは出場3試合連続を含む4勝を挙げシニア人気に拍車をかけた。何しろ彼はゴルフ界最強のショーマンなのだからギャラリーを飽きさせない。
10月のドミニオン・エナジー・チャリティ・クラシックでは2日連続同じホール(9番パー5)でまさかの『9』。それでも落ち込むことなく「自分がやっているのはいかに球を遠くに飛ばすか。ドライビングディスタンス1位にいることが重要なんだ」と豪語。すると翌日出場した契約先のプロアマイベントでホールインワンを達成。9もあれば1もある。それがミケルソンの真骨頂だ。
契約しているミゼン&マイン(ビジネスシャツメーカー)のCMでも本領を発揮。リモート会議が終了したと勘違いしシャツとパンツ一丁で面白ダンスを踊り始めるミケルソン。ところがオフラインになっておらず、面白ダンスを会議のメンバーに見られてしまうというもの。これはCMというよりむしろコントといっていい仕上がりである。
コーヒーダイエットに成功した彼は9月30日のナショナルコーヒーデイ(こんな日があったのが驚き!)に皆の健康を願い、ドライバーの長さ規制を実施するUSGAに噛みつき、とにかく1年中忙しかった。そんな愛すべきミケルソンが新年となる22年も幸せでありますように!