会場を埋め尽くしたハワイのギャラリーが松山の一挙手一投足に歓声をあげる。歴代チャンピオンのヘンリーを完全にアウェイに追いやった松山がホームの雰囲気の中、圧巻の逆転劇を見せつけた。
フロント9を終えた時点で5打差を追う展開だったが10番のバーディで4打差とすると11番ではヘンリーがバンカーからのアプローチを大きくオーバーさせボギー。いっぽうの松山が4.5メートルを捻じ込み、あっという間に2打差に詰め寄った。
1打差で迎えた最終18番パー5。相手のバーディを想定してイーグルを目指しドライバーを握ると電光石火のひと振り。バーディを奪えなかったヘンリーとイーグル逃しのバーディとした松山が通算23アンダーで並びプレーオフへ。
再び18番で行われたサドンデス1ホール目。ティーショットはフェアウェイキープを優先し5番ウッド。目論見通り絶好のポジションを捉えると3番ウッドで放った第2打がピンそば1メートルの鮮やかなスーパーショット。
この場面をグリーンサイドで見ていたというアマチュアの中島啓太は「打った瞬間あまりよさそうではなかったのでどこに行ったのかな、と思ったら目の前に空からボールが降ってきて鳥肌が立ちました」と臨場感あふれる感想を口にした。
ヘンリーが寄らず入らずのボギーを叩く中、イーグルパットを確実に沈めた松山が昨年日本開催のZOZOチャンピオンシップ以来となるシーズン2勝目、ツアー通算8勝目を勝ち取った。
「日本人(青木功)がツアー初優勝した場所で勝ててうれしい。パットが全然ダメだったのになぜか入ってくれた」と喜びを口にした松山。
昨年マスターズに勝つまで4年間勝てなかった鬱憤を晴らすように要所要所で意味のある勝利を積み重ねているが、この流れは16年から17年にかけ「出れば勝つ」といわれた頃の状況とよく似ている。
国内ツアーの日本オープン、三井住友VISA太平洋マスターズに勝ったあと年明けのWGC-HSBCチャンピオンズで優勝。2月にはウェイスト・マネジメント・フェニックス・オープンで連覇を達成し、WGC-ブリヂストン招待の優勝でシーズン3勝を挙げた16-17年シーズンを第1次黄金期と考えると、マスターズ以降ここまでの流れを第2次黄金期と位置付けてもよさそう。しかも22年はまだ始まったばかり。どこまで黄金期が続くか期待が高まる。
ゴルフは浮き沈みのあるスポーツだ。たとえタイガー・ウッズでも右肩上がりばかりではなく停滞期を経験している。しかし停滞している期間にどれだけ再びジャンプするための力を蓄えるかでその後のゴルフ人生は変わる。勝てなかった4年の歳月を松山は見事に結果に昇華させている。