昨年、全米女子オープンを制し、樋口久子さん、渋野日向子選手に次ぐ、日本人女子3人目のメジャーチャンピオンとなったのが、笹生優花選手です。パワフルなショットと強気のパッティングが魅力の彼女。今季は、賞金女王のみならず、世界ランキング1位も狙える位置にいるのではないでしょうか。
そんな笹生選手のスウィングですが、まず注目してもらいたいのは、トップでグリップエンドが体から非常に遠いところです。アーリーコック気味にバックスウィングしながらグリップエンドを体から遠ざけていき、そこから強く踏み込むことで大きな捻転差と強いタメを作り、スピードを生み出しています。
トップで、左足からグリップまでが一直線に並び、左腕が真っすぐに伸びて張りがあるところも見逃せません。この張りがあるからこそ、切り返しで強い捻転差を作ることができるのです。
通常、女子選手の場合、腕の強さが足りないため、トップでここまでの張りを出せません。それができるのは、フィジカルの強い笹生選手ならではと言えるでしょう。
さらに、ダウンからインパクトにかけては、左脚を伸展させ、地面反力を利用してクラブを加速させているのがわかります。この切り返しからインパクトまでの一連の動作こそが、彼女のスピード、飛距離の源なのです。
次に、飛球線後方から見ると、完璧なポスチャー(姿勢)が目を引きます。女子の場合、やや丸みを帯びた柔らかさを感じさせる構えをする選手が多いのですが、笹生選手は背中がストレートに伸び、まるでPGAツアーの男子選手のような力強さを感じさせます。
最大の特徴はダウンからインパクトにかけて、クラブが非常にシャローに(ゆるやかな入射角度で)下りてくるところでしょう。
通常、ダウンスウィングでは、クラブが右肩から右肩の下あたりを通って下りてくる選手が多いのですが、笹生選手の場合は、右ひじのあたりから下りています。本人は、ローリー・マキロイを手本にしていると言っていますが、このダウンスウィングはマキロイ以上。セルヒオ・ガルシアに並みのシャロースウィングと言えるでしょう。
このシャローな軌道によって、手元の低い(浮き上がらない)インパクトが実現され、彼女の正確性につながっています。
ただ、柔軟性と強さを兼ね備え、ツアー屈指のタメを作る笹生選手のスウィングは、一般アマチュアにとっては極めてマネしにくいものだと思います。参考にするのであれば、アドレスの張りやバランス。躊躇なくフィニッシュまで振り切るスウィングの全体像などを見てもらうのがよいでしょう。
このタイプのスウィングを見るときに、いちばん危険なのは、途中の動きを切り取ってマネることです。とくに、ダウンのタメやインパクトの形を見てマネようとすると、スウィングを崩す原因となるので注意してください。