年を追うごとに性能の進化が続くドライバーだが、そのトレンドも刻々との変わってきている。ドライバーの「調整機能」の最新事情についてトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが語る。

過去10年あまりのドライバーの進化を考えたとき、非常に特徴的だったのが弾道調整機能だ。2008年に高反発を規制するルールが施行され、2009年にヘッドとシャフトが着脱可能ないわゆる“カチャカチャ”を搭載したテーラーメイド「R9」が発売された。それ以前にも、着脱式のドライバーがないわけではなかったが、「R9」以降は他のメーカーも次々に追随し、“カチャカチャ”はドライバーにとって当たり前の機能になっている。

そして、テーラーメイド「SLDR」(2013年)やキャロウェイ「グレートビッグバーサ」(2015年)など、今も採用されるモデルが多いスライドウェートが搭載されたドライバーが本格的に登場。さらに、キャロウェイ「ビッグバーサ アルファ」(2014年)、ナイキ「ヴェイパー フレックス」(2015年)やタイトリスト「917D」(2016年)のような、両端の重さが異なる棒状のウェートをヘッド内に挿入するような、複雑な機構を持つモデルも現れた。

これらの弾道調整機能がもつメリットは大きい。シャフト交換が容易になり、過去に自分が所有するシャフトの利用もおこないやすくなった。ツアープロも恩恵を受けていて、新しいシャフトのテストはもちろん、ウェートを調整することで、フィッティングがおこないやすくなった。

毎年登場する新製品に、海外のトッププロたちがいち早くスイッチできるのは、彼らの順応性の高さや自分好みのクラブを選ぶ能力に長けているためだが、いっぽうでこうして“カチャカチャ”やウェート可変など、ドライバーのフィッティング性能が向上している点も見逃せない。たとえば、スライドウェートが広範囲に搭載されたテーラーメイドの「M1」、「M3」、「M5」では、使用するプロたちが思い思いのウェート位置を選択し、それが選手の個性になっていた。

しかし、近年ではこうした複雑な弾道調整機能を搭載しないモデルも増えてきている。テーラーメイドの昨年モデル「SIM2」シリーズや、キャロウェイの最新モデル「ローグST」では、4機種のドライバーいずれも可変ウェートが搭載されていない。

画像: キャロウェイの最新モデル「ローグ ST」シリーズのドライバーには可変ウェートが搭載されていない(写真はローグ ST MAX)

キャロウェイの最新モデル「ローグ ST」シリーズのドライバーには可変ウェートが搭載されていない(写真はローグ ST MAX)

ヘッドとグリップのウェートを付け替えることで、最適な振り心地を得られるという「クロスバランステクノロジー」を搭載した「ONOFF AKA」のようなモデルもあるが、現在のドライバー事情は、少し揺り戻しが起こって、複雑な弾道調整機能を積極的に開発しなくなっているように見える。

これには、各メーカーさまざまな事情があるだろうが、いちばんはやはり複雑な弾道調整機能を採用すると、より性能を出すのに不利に働くためだろう。
たとえば可変式スライドウェートや棒状の挿入式ウェート機構の場合、そのウェートの重量だけでなく、ウェートを移動するレール部分や挿入するウェートの受け部分も大きな重量を取る。余剰重量が生まれる余地がそれだけなくなってしまうため、重心設計をおこなううえでハンデになりやすいのだ。

そして、そもそも多くのアマチュアゴルファーが弾道調整機能の利活用に積極的でないという事情もある。「いやいやオレはカチャカチャもウェートも積極的に使っている」というギアマニアももちろん多いだろうが、大多数のゴルファーは、ウェート位置やスリーブのポジションを購入したときのまま変えずに使用しているというデータもある。

近年はヘッド周辺に重量を配分して、慣性モーメントを大きくするのがドライバーのトレンドのひとつになっている。それをおこなうのに不利になるような複雑な弾道調整機能は、今後はさらに採用されにくくなりそうだ。

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