サウジのスーパーゴルフリーグとPGAツアーは競合関係にある。莫大な移籍契約金(30億円とも50億円ともいわれる)で選手を囲い込み予選落ちなしで年間12試合以上を開催する予定のSGLはPGAツアーにとっては脅威。レガシーを優先する若手の流出はなさそうだがベテランで興味を示す選手はおり、すでに17名が移籍を決意。来週のプレーヤーズ選手権で選手名が発表されるという。
そんな中、ミケルソンはゴルフライター、アラン・シップナップ氏とのインタビューで「PGAツアーが放映権を掌握していることで選手たちの肖像権が侵害されている」と訴えたほかツアーの余剰金8億ドルの使い道に関しても疑問を呈し「ツアーは独裁的」と断罪した。
そのいっぽうでSGLについても「サウジアラビア政府が(ジャーナリストの)カショギ氏を殺害し、多くの人々の人権を侵害していることを知っている」と過激発言。「それでもSGLを支持するのはPGAツアーを再構築するための最後のチャンスだから」と持論を展開した。
これにはローリー・マキロイやジャスティン・トーマスら選手が「エゴイスティック」「利己的な発言」と批判し「大金よりもツアーのレガシーを優先する」と表明。世界ランク上位のジョン・ラームやコリン・モリカワも同様で、予てからSGLの目玉と目されていたダスティン・ジョンソンやブライソン・デシャンボーもPGAツアーで戦うことを明言した。
新リーグへの選手流出を防ごうとあの手この手で策を講じてきたPGAツアーは、昨年から成績とは別にツアー人気に貢献した選手ベスト10にボーナスを支給するプレーヤーインパクトプログラムを開設。皮肉なことにその第一号ナンバー1にタイガーを抑えミケルソンが選ばれ800万ドル(約9億2千万円)を獲得している。
それでもなお、ツアーに搾取されているというのか? 若手からは「あれだけ稼いで何が不満なのか理解できない」という声が上がった。
各方面からの批判を受けミケルソンは「オフレコのはずの発言が公開されてしまった。言葉の選び方を間違え真意が伝らなかった」と謝罪したが時すでに遅し。メインスポンサーであるKPMGが契約を解除。Workdayも3月いっぱいで契約打ち切りを決め用具契約を交わすキャロウェイは「契約の一時停止」を申し出た。
少なく見積もっても数十億円単位の後ろ盾を失ったミケルソンは「自分からスポンサーに契約を中断、あるいは終了するよう選択を促した」といい「ここ10年プレッシャーとストレスで精神が蝕まれベストな状態ではなかった。しばらくゴルフを離れる」とSNSで発信。当分レフティの姿をトーナメントで見ることができなくなりそうな状況だ。
一部では引退の危機も囁かれているがそれではあまりにも寂しい。タイガーが事故による大怪我で競技を離れ、長年ライバルとしてツアー人気を二分してきたミケルソンが見られなくなる。ひとつの時代の終焉が近づいているのだろうか?