スプーンはドライバーの次に長いクラブで、しかも地面にある球を打つため扱いが難しいクラブのひとつとして挙げられることが多い。これを打ちこなすのに、スウィングから見直すことでやろうとすると時間も掛かるし相当困難だが、アドレスを変えるだけで難しかったスプーンが驚くほど楽に打てるようになると新井は言う。
「そもそもスプーンには『ウッド的な打ち方』と、『アイアン的な打ち方』があります。多くの方は、この2つの打ち方を混同して、ひとつの打ち方で何とかしようとするからなかなか打ちこなせないのです。私は、ゴルフスウィングはアドレスの結果論だと思っているので、スウィングで調整するよりもその打ち方に合った正しいアドレスをすることで、より簡単に確実に、スプーンを打てるようになると思っています」(新井、以下同)
では、スプーンにおける2つの打ち方とはどういうものなのか。最初にウッド的な打ち方をするといいシチュエーションについて説明してもらおう。
「まずウッドっぽい打ち方をする状況について説明します。両サイドOBなどの狭いホールや、飛びすぎると池などのハザードに入つかまりそうなときなど、危険回避のため。さらに、ウッドっぽい打ち方のほうが弾道も低くランも出ますから、パー5ホールのセカンドショットでグリーンの近くまで飛ばしたいというとき。そしてドライバーの調子が悪いときなどには、ウッド的な打ち方をおすすめします」
ではスプーンを『ウッド的な打ち方』で打つためのアドレスの作り方を教えてもらおう。
「ウッド的な打ち方をするときのアドレスの基本ですが、【1】ヘッドの中心(フェース面とバック側の中間)から伸ばした線がちょうどおへそにくる。【2】肩幅にスタンスを広げる。【3】ボールはやや左側にセットされる。【4】ボールの右側を見る。この4つがポイントです。このとき、体重配分は5:5になるようにしてください。右からボールを見ると、右足に体重が多く掛かった体重配分になりがちですが、ダフリの原因になってしまいますよ。このアドレスが作れると、自然にヘッドが円を描く軌道になるのでシャローにヘッドが入る、ウッド的な打ち方になるわけです」
次に、スプーンのアイアン的な打ち方についてだが、まず、どのような状況で使えるのだろうか。
「アイアンっぽく打つ状況ですが、飛距離よりも方向性を重視するコントロールショットを打ちたいときや、パー5ホールのセカンドショットで距離的には十分届く際ピンの間近で球を止めたい、というときなどに有効です。さらにアイアン的な打ち方の場合、クラブが上から入ってくるので、傾斜にかかったライからでも打つことができます」
では、スプーンをアイアン的に打つ場合のアドレスについて教えてもらおう。
「まず【1】ボールをおへその前にセット。【2】ボールを中心にして左右均等に足を肩幅に開きます。【3】ボールを真上から見る。これで完成です。この構えからは、テークバックでクラブは直線的な軌道で上がっていくのでアイアン的なスウィングになります」
そしてよくあるスプーンで起こりがちなミスは、この2つの打ち方を混同することで生じることが多いのだという。
「スプーンで打つときに多いのが、ウッド的な打ち方のアドレスをしておきながら、アイアン的な打ち方になっているケースです。つまり、ボールを左側に置いていながら、アイアンっぽく上から鋭角的にクラブを当てにいく打ち方ですね。左に置いた球を上から打ちに行くわけですから、フェースが開くとカットスライス、フェースが被ると引っかけのフックボールと、左右両方向へのミスが出ます。ボールを左寄りにセットしたときは円軌道でシャローに打つ『ウッド的な打ち方』を、ボールを真ん中に置いたときには直線的な軌道の『アイアン的な打ち方』と、しっかり分けて打てるようにしておきましょう」
このウッド的な打ち方とアイアン的な打ち方を使い分けて打てるようになると、スプーンはより簡単に使える武器になると新井麻衣は力説。ぜひ試してみよう。
TEXT&PHOTO/古屋雅章
撮影協力/SEKI GOLF CLUB 目黒