「MT-28」や「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ設計のホントをクールに紹介する新連載!

みんなのゴルフダイジェスト取材班(以下、み):テーラーメイド「ステルスドライバー」のカーボンフェースはチタンフェースと比べて約20グラムも軽いと聞きます。その余剰重量の多くがバックウェ―トとして配置されているので重心はかなり深くなっているようです。でも、ちょっと前までは重心の浅いドライバーのほうがスピンが少なくて飛ぶ! と、もてはやされていました。実際には深重心と浅重心のどちらが飛ぶのでしょう。

宮城:確かに浅い重心のドライバーも流行りましたが、それはひとつの通過点です。結論からいえば、複合ヘッドを作れないメーカーを除けば、今後、浅い重心のドライバーが出てくることはないでしょう。

み:えっ!!  ど、どうしてですか?

宮城:そもそも浅重心が飛ぶというのは誤魔化しに近い話です。重心を前にもってきて浅くするのはスウィートスポットの位置(フェース面上の重心位置)を低くするためです。スウィートスポットの位置が低ければ、それより上の部分に当たりやすくなり、ギア効果でバックスピンが減って飛ぶ確率は高くなります。でも、スウィートスポットの位置よりも下で打ったらスピンが増えるし、重心が浅いヘッドは球がつかまりにくく打ち出しも低くなるのでヘッドスピードの遅い人は飛ばせません。曲がりにくさも考えるとドライバーの重心は「低くて深い」がベストです。

み:そう考えるとフェースをカーボンにすると、重量を後ろにもっていきやすいのでうってつけですね。

宮城:それもありますが、「ステルス」がすごいのはカーボンフェースにすることで余った重量を全部後ろに持っていかずに、フェース面を広げることに使ったことです。

み:確かに「SIM2」と比べると「ステルス」はフェースのトゥ側が高くなっていますね。そうすると、いったいどんな効果があるんですか。

宮城:たとえばスウィートスポットの位置が30ミリにあるとしましょう。フェースの高さが50ミリなら高重心。同じく30ミリでフェースの高さが60ミリなら低重心、70ミリなら超低重心になります。重心の高さと低スピンは直結するわけではなく、同じ重心の高さでも「ステルス」のようにフェースを縦に拡大すれば効率よくスピンが減らせるということです。ちなみにスウィートスポットの位置からフェースの上までの長さを「第2重心高」もしくは「有効打点距離」といいますが、ドライバーを設計するときはそこしか考えません。

画像: 赤い丸印がフェース面上の重心位置=スウィートスポット、黄色のラインがフェース面上の重心高、青色のラインが「第2重心高」、または「有効打点距離」と呼ばれる

赤い丸印がフェース面上の重心位置=スウィートスポット、黄色のラインがフェース面上の重心高、青色のラインが「第2重心高」、または「有効打点距離」と呼ばれる

み:なるほど。もうひとつテーラーメイドの開発責任者は、重いボディが軽いフェースを押すことでエネルギー伝達効率がアップしたことも「ステルス」が飛ぶ要因と話しています。つまり重心が深いとボールスピードが上がると考えていいのでしょうか。

宮城:パターで考えるとわかりやすいですよ。重心の深い大型マレットは重心が軌道の最下点にくるまで加速しようとします。加速しながらインパクトを迎えるのでより大きなエネルギーが伝わってボールが転がります。ドライバーも後ろを重くすることで同じヘッド重量でも効率よく飛ばせます。僕が後ろの重いディープバックのドライバーしか作らないのもじつは同じ理由なのです。

画像: 「有効打点距離」に加え、ヘッドの後ろ側が重いと加速しながらインパクトを迎えるので、ヘッド重量が同じでも効率よく飛ばせる

「有効打点距離」に加え、ヘッドの後ろ側が重いと加速しながらインパクトを迎えるので、ヘッド重量が同じでも効率よく飛ばせる

This article is a sponsored article by
''.