最終日のバック9、堀は一度首位を明け渡した。抜き去ったのは2つ前の組で8番から6連続バーディを奪ったルーキー・内田ことこ。ただし、堀はそれに気づいておらず「14番のグリーンぐらいで(キャディの)大溝(雅教)さんに言われました。さっきまで(トップは)9アンダーだったんだよって」。内田は15番をダブルボギーとして失速。首位に返り咲くまで伝えなかったのは大溝キャディーのベテランの妙だろう。
そんな気遣いに応えるように堀は終盤も安定したプレーを披露した。16番パー5のバーディで単独首位に返り咲くと、17番パー3では2メートルのパーパットを沈めてガッツポーズ。「ドキドキしかなかったです」という最終18番パー4もきっちり2パットのパーで逃げ切った。
復活を遂げた昨年は初戦で2年ぶりの予選通過。翌週、3年半ぶりのトップ10入りとなる8位に入り、スランプで失った自信を取り戻すと、かつての好調時にも届かなかった初優勝にたどり着いた。ただし、ここから終盤戦にかけては思うような結果が出ないままシーズン終了。堀の中で「もう勝てないかも」という不安がちらついたが、復活に導いた森守洋コーチの見方は違っていた。「『伊藤園レディス』(昨年11月)でキャディをしたらピンを狙うショットの精度がすごいんですよ。これから何勝もできると思わせるショットを打っていましたね」。
それだけに今オフは自信を持たせることを最優先。「技術的なことは何も変える必要がなかったので『年間4~5勝できる』って言い続けました。言葉は悪いですけど、洗脳です(笑)」。その効果は大きかったようで堀は優勝会見で「森さんに相談できて、ポジティブな言葉をかけてもらったのがよかった」と話した。
何も変えなかったという技術面でもチェックポイントはある。それは堀が大会中に見せていたショットの前のルーティンに隠されている。「球筋をドローからフェードに変えたので、リズムが狂うと、体が早く開きやすくなります。そこで切り返しで沈み込むような動きをルーティンに取り入れました。開かないのではなく、気持ちよく開くための予備動作ですね」(森コーチ)。今大会は3日間でフェアウェイを外したのがわずかに6回。新ルーティンが功を奏し、最後まで安定感をキープした。
逆転だった初優勝とは違う逃げ切りでの2勝目に堀は「すごく自信になると思います」。森コーチの言葉で芽生えた自信、そしてこの日、自らの手でつかみ取った自信を失わなければ、年間4~5勝を実現する姿が見られるかもしれない。