カルフォルニア州カールスバッドにあるアビアラゴルフクラブで火曜日の練習日の渋野日向子選手の様子を取材しました。
こちらは朝晩は冷えますが日中は27度とキャディは半袖短パンのスタイルです。渋野選手を間近で見るのは昨年11月の「伊藤園レディス」以来、4か月ぶりになりますが、練習ラウンドについて歩くと推薦ではなく予選会のランキングで出場できるまで自力で這い上がって来ただけの雰囲気が出て来ています。
具体的にいうと洋芝への対応力がかなり高まっていました。ラフからの距離感、グリーン周りのアプローチやパッティングと、そのコースの芝に合わせたフェースの入れ方やタッチが自然とできていて、練習に終始するのではなく、コースをチェックをしながら想定するピン位置に対しての距離感やアプローチなど実戦を想定した練習ラウンドができていました。
そういった姿からも、米女子ツアーでは先輩の畑岡奈紗選手と同じように気の遠くなるほどのたくさんのボールを打ち、トライアンドエラーの中から選別し磨き上げる作業を積み重ねてきたことが感じ取れます。
開催されるコースの「アビアラ ゴルフクラブ」はアーノルド・パーマーの設計で、フェアウェイは狭くはないものの、うねりがありフラットなライから打てることは少なくなりそうです。ティーショットは豪快に打てますが、丘陵地に造られていてアップダウンや砲台グリーン、池がらみもあり2打目以降は頭と技術を必要とされるコースになっています。
グリーン面もうねるようなアンジュレーションがあるので、落ちた場所によっては止まらずに前に転がったり、逆に止まってしまったりと運に左右される要素も大きく、メンタル的にフラットに保つことも要求されます。
洋芝への対応ともうひとつ、左足下がりやつま先下がりなどの傾斜のかかるショットでの安定感が増していました。トレーニングの成果もあるとは思いますが、立ち方というか、ごく自然に傾斜に対応した構えができていて、フィニッシュまでバランスを崩すことなく振り抜けていました。
そして心強いのが、キャディとして帯同している佐藤賢和さんの存在です。昨年は来週開催されるANAインスピレーション(今年からシェブロン選手権)を1打差で予選落ちしていましたが、「今年は絶対にリベンジします」と今週と来週の2週続けて帯同することになっています。佐藤キャディは選手の持ち味を引き出すのが上手いだけでなく、風やライ、打ち上げ打ち下ろしによる距離のジャッジも正確です。
数々の選手の活躍を支えてきたベテランキャディですが、東北福祉大ゴルフ部出身で奥様は北田瑠衣選手ということもあり、女子選手の気持ちもよく理解できるのでしょう。
破竹の勢いだった2019年は、少ない武器をフルに使って攻めるゴルフで数々の勝利を重ね、2020年は不調に苦しみましたが全米女子オープンでは首位で3日目を終え結果的に4位タイでフィニッシュ。2022年はスウィング改造に着手し、心配されるも後半に国内2勝を挙げ、米女子ツアーの予選会を突破し、ツアーメンバーとしてフル参戦までたどり着くという目まぐるしい数年を過ごしてきました。
国や地域によって変わるコースコンディションを経験し、前試合のタイで行われた「ホンダLPGAタイランド」では4日間60台を並べて8位タイで終え、着実に技術の幅が広がり選択肢も増えたなかで最良な打ち方やマネジメントができるように大きく成長してきているという印象です。
2022年の渋野選手はどんなゴルフを見せてくれるのか、しっかりと見届けたいと思います。
写真/中村修