昨年、2シーズンぶりにツアー優勝(2勝)を果たし、今季の活躍が期待される渋野日向子選手。一昨年から取り組んだスウィング改造の結果、以前に比べるとトップがかなりコンパクトになりました。
基本的に、トップをコンパクトにするほど飛距離は落ちやすくなりますが、再現性は高めることができます。つまり、多少飛距離をロスしても、ショットの精度をアップさせたかったということでしょう。
ショットの精度という点において、注目したいのはダウンスウィングです。
飛球線後方からダウンスウィングを見ると、かなり早い段階でシャフトがボールを指し、クラブがプレーンに乗っていることがわかります。プレーンに乗るタイミングが早いということは、それだけインパクトゾーンが長いということ。この状態を作ることができれば、あとは体を回転させるだけでボールをとらえることができるのです。
同じポジションで、シャフトが右ひじのラインから下りているところにも注目してください。これは、かなりシャローな軌道で振っている証拠と言えます。
よく、入射角度はシャローなほうがショットは安定すると言われますが、ここまでシャローな選手は、プロでも多くありません。アマチュアのみなさんであれば、右肩か、右肩の少し下から下りる軌道を努力目標にするとよいでしょう(右肩より上から下りる人は入射角度が鋭角すぎる)。
では、アマチュアのみなさんが、コンパクトなスウィングを目指すべきかという問題ですが、これはケースバイケースと言えます。
前述のとおり、トップをコンパクトにすると、助走距離が短くなるぶん、飛距離が落ちる可能性が出てきます。とくに、ダウンスウィングでタメが作れない、もしくは、タメが非常に少ないプレーヤーの場合、極端に飛距離が落ちる危険があるので、トップを小さくすることは、あまりおすすめはできません。
それに対して、トップで左ひじが曲がって、オーバースウィングになる人や、トップで左腕が胸にくっついてオーバースウィングになるような人は、少しコンパクトにして、シャフトが地面と平行になるくらいのトップを目指すと、ショットが安定する可能性があるでしょう。
このとき、単純にトップを小さくすると、力が入らなくなって、飛距離をロスしやすいので注意します。
意識すべきは、早めの切り返しです。トップの形を作ってからダウンスウィングに入るのではなく、バックスウィングで左腕が地面と平行になったあたりで、左足に鋭く踏み込んで切り返すのです。
このように、早めのタイミングで切り返すと、自然にトップは小さくなります。また、左足に鋭く踏み込むことで、体の回転の力とタテの力、いわゆる地面反力を使えるようになり、タメが作りやすくなる。その結果、トップをコンパクトにしてもスピードを落とさずにスウィングできるというわけです。
オーバースウィングは直したいけれど、トップをコンパクトにすると飛距離が落ちてしまう。そんな悩みのある人は、この早めの切り返しにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
写真は2022年のJTCBクラシック 撮影/中村修