2日目が中止となり、36ホールの短期決戦となった今大会を制したのは20歳の西郷だった。単独首位から出た鈴木愛らの最終組がスコアを伸ばせず、大混戦となるなか、ひとつ前の組の西郷は5、7、8番と立て続けにバーディを奪い単独首位に浮上。9番で今大会唯一のボギーを叩いて後退したものの、10、13番とバーディを重ね、再び混戦から抜け出すと、終盤は危なげなくパーを重ねた。
安定感抜群のショットに加え、今季の強さを支えるのはオフに強化してきたショートゲーム。リカバリー率は昨季の63・65%(24位)から78・18%(4位)と大きく上昇している。優勝会見では練習時間の比率がショット「8」、ショートゲーム「2」から5対5に変化したことを明かしたが、ここ数か月練習だけで急成長を果たしたわけではない。
およそ1年半前、初出場だった2020年「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」でのこと、ティフトン芝が混じるラフに苦戦していた西郷は練習場で先輩プロのアプローチに注目していた。「あの打ち方はやったことがない。ティフトン用なのかもしれないけど、ほかのコースでも使えるんじゃないかと思います」。話しかけてアドバイスを求めるどころか、見ていることを悟られないように自身も練習をしながら、その合間にチラチラとのぞいていたのはシャイな性格故なのだろう。自らの課題に向き合い、研究熱心だったのは当時から。その積み重ねがようやく花開いたのだ。ちなみに、西郷の視線の先にいたのは、この日西郷に逆転を許した鈴木だった。
首位に立って迎えた終盤は珍しく「緊張しました」と振り返ったが、周囲にはそれを感じさせない堂々たるプレーぶり。初優勝を挙げたことによる変化なのか、どこか自信なさげな雰囲気はすっかり影を潜めた。同じ組で優勝を争った山下美夢有らとともに、高校3年生でプロテスト受験が可能になった最初の世代。最終プロテストではショートパットに苦しみ、ホールアウト後に連日、涙を見せていたが、当時からは別人のようにたくましくなった。
目指すのは永久シードの通算30勝。あこがれの人はそれをはるかに上回る通算50勝のレジェンド不動裕理だ。道のりはまだまだ長いが、確実に一歩、夢へと前進した。