那須ゴルフ倶楽部は、避暑地である那須岳山麓の海抜850~1000メートルに展開する変化にとんだ非常に面白い18ホールだ。自然の起伏と山に吹く風が自然のハザードの役割をしているため、井上誠一はあえてバンカーや池を多く作らなかった。豪快な打ち下ろし18番ホールを紹介。
昭和の初期、当時の富裕層は避暑地に興味を抱いていた
那須岳山麓の海抜850~1000メートルに展開するコースで、高低差を感じさせないホールもあれば、山岳を意識させるホールもあり、変化にとんだ非常に面白い18ホールといえる。昭和の初期、当時の富裕層は外国人宣教師などによって紹介、開発され始めた避暑地に興味を抱いていた。
軽井沢GCは、主に東京GCの会員が中心となって開発されたが、霞ヶ関CCの会員は那須に避暑地を求めた。温泉分譲を基本として、ゴルフ場建設をするという構想だった。そのため温泉分譲地から手が付けられ、コースの完成前にロッジができているのは面白い。コースの設計は霞ヶ関CCの会員、藤田欽哉と井上誠一が行った。当時藤田の健康は思わしくなく、井上が単独で設計をしたといわれている。文献によっては井上の単独設計第1号とされてもいる。
自然の起伏と山に吹く風が自然のハザードの役割をしている
古くから文化人や富裕層に親しまれてきたコースは、李王らがプレーを楽しみ、また温泉に浸かり疲れを癒すゴルファーは多い。避暑地に滞在してゴルフを楽しむことが戦前から行われているわけだ。
井上誠一が腕を振るった那須GCにバンカーは僅か18個しかなく、フェアウェイを横切るクリークはあるが、池は1カ所のみ。その理由は、自然の起伏と山に吹く風が自然のハザードの役割をしているからだ。加えて平坦なライは少なく、各ホール多種多様なライがあってゴルファーを悩ませる。ここには個性的なホールが多いのだ。例えば急激な打ち上げの12番ホール(496ヤード/パー4)や、豪快な打ち下ろしの16番ホール(239ヤード/パー3)などがあるが、今回は最終18番ホールを紹介したい。