昨年の12月、GMOの熊谷正寿社長が自身のSNSに、「無料ネット配信が許されないなら、主催を降りる」と投稿し話題になった。事前に説明をしているというJLPGAとの食い違いもあり、結果的にGMOは主催を辞退。熊谷氏は「将来的に賞金総額を増額し、国内NO.1トーナメントにする」と意気込んでいたが、結果としては国内女子ツアーの主催を1年で撤退することになった。経緯が経緯なので、今後戻ってくることも難しいだろう。
これは、国内女子ツアーが今季からネット配信を『GOLF TV』と『DAZN』というふたつの動画配信サービスに限定し、その有料会員のみが視聴できるかたちとなったこと。その結果、GMOが求めていた無料でのインターネット中継が難しくなったために起きた出来事だ。
現在、開幕から4試合が行われ、そのすべての試合で『GOLF TV』と『DAZN』によるネット配信が行われた。それらをすべて視聴した感想を紹介してみたい。
まずよかった点だが、録画でなく、ライブ配信が可能になったことだ。
TV中継を楽しみにしていたら、先にネットニュースやSNSなどで結果を知ってしまったという経験はないだろうか。ライブ配信によって、結果のわからないライブの緊張感をより味わうことが出来た。
もう一点は、初日、2日めなどの予選ラウンドを放送してくれることだ。予選ラウンドでは、とくに上位陣に限定されることなく、多くの選手達のプレーを見ることが出来る。また、地上波放送ではほとんどハイライトでしか放送されないフロント9でのプレーも長時間放送されるので、見ごたえはじゅうぶんだ。
正直、地上波放送とは比較にならない圧倒的な情報量であり、女子ゴルフファンであれば、大きなメリットのあるサービスだと感じた。大きなデメリットは、有料であることだが、『GOLF TV』は月額1,000円からとそれほど高額ではない。それでJLPGAツアーだけでなく、PGAツアーなど海外の試合も多く見られるのでお得感がある。ゴルファーにとっては、グローブ一枚、ボール1スリーブ弱くらいの費用と思えば、それほど負担にはならないのではないだろうか。
『DAZN』は先だって大幅に値上げして月額3,000円となったが、サッカーや野球、モータースポーツも見る人に取っては、こちらもそんなに高額とはいえないだろう。「いやいや、オレは1円だって支払いたくない」というワガママなファンもいるかも知れないが、そんな人には地上波の無料放送や、試合によってはBS放送もある。
近年は、クラウドファウンディングやYoutubeのスーパーチャットなどの定着もあり、サービスに対価を支払うということに意識的なユーザーも増えてきているように感じる。お金は払いたくないが、サービスは受けさせろ、というファンは意外と少数派なのではないだろうか。
先だってのサッカー日本代表では、W杯に出場が決まるという重要な試合が『DAZN』のみの放送になるという事があった。そうなるとライト層へのリーチという面でたしかに懸念すべき点はあるだろう。
しかし、こと国内女子ツアーに関しては、地上波放送はほぼ例年通りおこなわれて、それに有料インターネット放送が加わってサービスが拡充したと考えた方が適切だろう。既存のゴルフファンにとってはメリットは大きくなったと感じた。
いっぽう、「TVを持っていない若い層へのリーチが出来ない」という批判もあり、これについては、今後、別のかたちでの無料限定配信やSNSでの発信など、改めて対策をおこなっていくべきだろう。また優勝争いの佳境では映像がやや不安定になるなどの技術的な問題もあるようだが、それらもこれからの課題と言えそうだ。
4試合を終わった現時点では、有料ネット配信のみにかじを切った方針は、ファンにとっても有益なのではないかという感想を持った。課題はもちろんあるだろうが、まだ始まったばかりということもあり、これからじょじょにクリアしていけばよいのではないだろうか。