今年、男子ツアーの出場権を決めるQTで34位に入りレギュラーツアーに挑戦する権利を獲得した松田一将プロは、この最新4スタンス理論によって開眼したという。松田プロの所属する「ザ・ロイヤルゴルフクラブ」内の「廣戸道場」で松田プロを指導し、西野貴治プロに、松田プロへの指導内容をベースに、アマチュアにも役立つポイントを聞いた。
前回はアドレスのバランス感覚や始動時の意識について教わったが、今回はさらにアドレスのポイントについて深掘りしていく。
なぜこれほどアドレスにこだわるのか。西野プロは「スウィングが乱れるのは、そのスタート地点であるアドレスが悪いから。軸のあるバランスのいい構えさえできていれば、スウィングの問題はほとんど改善されてしまうと言ってもいいくらいなんです」と話す。
たとえばバックスウィングで伸び上がる人は、伸び上がる動きをして悪い点を相殺しないとバランスが崩れてしまう構えをしている。下半身が使えないという人は、下半身を使ったらバランスが崩れてしまうような立ち方をしている。そのことこそが問題で、それをスウィング中の動きだけで修正しようとしても根本的な解決にはならないというわけだ。
松田プロも「立ち方とアドレスがよくなると、『普通に』振るだけでいい位置に収まるようになるので、スウィングをあれこれ考える必要がなくなるんです。ただし立ち方やアドレス自体も、考えながら作っているうちはダメ。普段の生活から気をつけて、細かいことを考えなくても自然といい立ち方ができるようになることが第一歩だと思います」と、立ち方、構えの重要性を力説する。
また軸のあるアドレスができれば傾斜地での安定感もアップする。傾斜地では「大振りせずにコンパクトに振ることが大事」と言われるが、傾斜に合わせて正しく構えられればそういった点もわざわざ意識する必要がなくなるという。
「僕の傾斜地のスウィングを平地と比べたら、トップは小さくなっていると思います。でもそれは僕が意識してコンパクトにしているわけじゃないんです。ライなりの構えをした結果、自分にとって“普通に”スウィングすると勝手にコンパクトになる。だから余計なことを考えずにすみます。こういった変化は自分でも驚いていますが、コースでのスコアメークに大きく影響していると思います」(松田プロ)
傾斜に合わせて構えが変われば、体が傾くぶん平地と比べて体の可動域が制限される。その状態で軸を保って「普通に」スウィングすれば、外から見たトップの形は自ずと小さくなる。傾斜に合わせて構え、その構えなりにスウィングすることで、結果的にこういった変化が生じるのであって、「傾斜だからコンパクトに振っている」わけではない。
このような変化が自然と生じることが、軸のある構えから得る大きなメリットだと西野さんは話す。さらに今回西野さんは、アドレス時の目線について説明してくれた。
「トップ・オン・ドーム」と呼ばれる、土踏まずの下にあるドーム状の仮想の空間の上に骨盤腔、第一肋骨、頭蓋骨の底が揃って乗っている立ち方が大前提中の大前提。ここからスタンスを広げ前傾する方法はこの連載の3回目で説明したが、それに加えて目線も大きな意味を持つという。
ポイントは構えたときの頭の向きだ。
「不自然にあごを引いたり突き出したりと、上体の角度に対して首が曲がって頭が傾くと脳が水平をとれずに体のバランスを保ちにくくなります。しかしゴルフの場合は前傾してスウィングするので、頭の水平ポジションをとるのが意外と難しい。これはまず軸のある立ち方をしっかり練習して身につけ、その状態をキープして前傾できるようになることが大事です」(西野さん)
なお、理想的な頭の角度はタイプによって異なる。A1・B2のクロスタイプの人は体を横から見たときに目尻と耳の穴を結んだ線が地面と水平になるポジション、A2・B1のパラレルタイプの人は鼻の下と耳の穴を結んだ線が地面と水平になるポジションにすると体が動きやすいという。そのため、クロスタイプの人よりもパラレルタイプの人のほうがあごが前に出て見えやすい。
ただしこれは過剰に意識したり、そうでなくてはいけないと決めつけるのではなく、あくまでチェック時の目安として気をつけるレベルにとどめておきたい。
「目線については、ボール後方に立ってターゲットを見るところから、歩いてボール地点まで行ってアドレスを作るまで、ターゲットから目線を切らずに頭の水平を保ったまま動くことも重要です。相撲の立ち合いなどを見るとわかりますが、蹲踞する前から相手に視線を置き、それを切らずに構えて立ち合いますよね。これはいわゆる『間合い』を測るために重要で、一度目線を切ると、間合いがわからなくなってしまうんです」(西野さん)
たしかにプロゴルファーには、ターゲットを見たままボール位置に入り、目線を切らずにアドレスする人が多い。やはりゴルフも武道などと同様に「達人」の所作はあるのだ。まずは形からでも真似して身につけていきたい。