渋野日向子という選手は、期待を裏切らないプレーを見せつけてました。とにかく、「シェブロン選手権」の2日目のプレーを終えた段階で首位に立ったのは、まぎれもない事実です。
圧巻のプレーだった今日の内容を振り返ると、振り切ったドライバーショットはことごとくフェアフェイをとらえ、アイアイショットはピンにからみ、バーディチャンスを文字通り量産しました。まだあと3つくらいは入ってもおかしくないパットがありましたので、完璧といってもいいほどのゴルフを披露してくれました。実は朝の練習場ではあまり体の動きがよくなくて、調子が良さそうには見えなかったのですが、ラウンド後の会見でそのことを聞かれると
「朝は寒かったのもあって、飛距離も飛んでいなかったのでその距離感を信じて大きめのクラブを持っておさえて打ってピンに付けることができました」
そのあと気温が上がるにつれて飛距離も伸びてくる中で、番手選びやピン位置に対するマネジメント、グリーンを外した際のアプローチとどの場面でも危なげなプレーでスコアを伸ばし、ついにはリーダーボードの一番上に名前を堂々と表示させました。
旋風を巻き起こした2019年もそうでしたが、ラウンドについて歩くと目が離せなくなってしまうのが渋野選手のプレーの特徴です。それは、2打目がOKについたり、チップインしたりと、ちょっと目を離した間にスーパープレーを見逃してしまうことがあるからなのです。まさに今日の渋野選手のプレーは、ショットでOKにつけたバーディが2つ、チップインが1つありましたし目を離しているスキにスコアを伸ばしてしまいそうな内容のゴルフでした。
会見で本人も話していましたが、とくに大きく成長したと感じたことは二つあります。ひとつは気温やアドレナリンの状態など自分の体のコンディションと会話しながら距離をコントロールできる能力がとても向上している点です。風があって肌寒い朝から汗ばむ陽気で風も穏やかになった日中の飛距離の差をしっかり把握し、途中スコアを伸ばしていった場面では思ったよりも飛んでいたと振り返ると、「アドってた」とアドレナリンが出て飛んでいたと分析しました。ゴルフは18ホールの間にさまざまな要因で体のコンディションは変わります。その瞬間の自分の体と対話しながらのゴルフができていたことは、ベテラン選手の術を身につけてきています。
もう一つはマネジメントです。ラフに入ると苦労するミッションヒルズCCで、どの選手も警戒しながらラウンドしていますが、渋野選手の場合はとにかくドライバーを振って少しでも前に進むという、19年当時の思い切りの良さを思い出させました。「フェアフェイキープをカギとせずにとにかく全力で振って、その方が曲がらない」という作戦が渋野選手らしいですよね。
そして2打目やパー5の3打目ではやみくもにピンを狙うのではなく、ライや風、ピン位置、グリーン周りのバンカーやラフ、グリーンの傾斜まで考慮したマネジメントが適格にできていました。例えば11番パー5の右サイドからの3打目は、バンカー越えでショートすれば手前に戻る傾斜のあるピンに対して無理せずピン奥に乗せ2パットのパーでストレスなく次のホールに進みます。
13番では奥からの寄せをチップインしバーディを奪い、14番からはチャンスを生かせずパーを並べましたがボギーを打たずに18番まで終えました。このコースをこんなに簡単にプレーする選手は初めて見たくらいの、見ていて安心感がありました。
まだ2日目が終わっただけで午後スタート選手が伸ばしてくる可能性も大いにありますが、ひとまず渋野選手のレポートをお届けしました。
写真/Blue sky photos