ゴルフでも武道でも達人の域に達する人は、自分の型をもっているように見えるのはナゼだろう。自分に合った型を見つけられれば、上達への道がきっと切り開けるはずだ。そこで廣戸総一氏の提唱する「4スタンス理論」をゴルフに当てはめ、ツアープレーヤーを指導する西野貴治プロに「4スタンス理論」を使ったゴルフ上達のカギを教えてもらおう。

体の動かし方の特徴によってゴルファーを「A1」「A2」「B1」「B2」の4タイプに分け、それぞれに合った体の動きを行うことでケガのない動きやスムーズな上達を促す「4スタンス理論」。かつてタイプ分けの面白さにフォーカスされて人気を博したが、現在は単なるタイプ分けレッスンにとどまらない「軸」という概念に基づいた自然で無理のない体の動かし方を追及する理論へと進化しているという。

今年の男子QTで34位に入りツアーの出場権を獲得した松田一将プロ(ザ・ロイヤルゴルフクラブ所属)は、この最新の4スタンス理論に基づく指導で才能を一気に開花させたことがQT上位の成績につながった。「ザ・ロイヤルゴルフクラブ」内「廣戸道場」でプロや研修生らに最新の4スタンス理論に基づく指導を行っている西野貴治プロに、松田プロへの指導内容をベースに、最新の4スタンス理論を教わる。

今回はグリップについて取り上げる。4スタンス理論においてはグリップも重要な意味をもつが、大事なのはオーバーラッピングとかインターロッキングといった手の形やクラブの握り方ということではなく、体に対する腕のポジションや向きだ。その前提として上腕の位置に注意する必要があると西野さんは話す。

「アドレスした際に、上腕骨が肩から真下に垂直に下がった位置にあることが大事です。(後方から見て)これよりも腕が内側に入って体に近いと頭の位置が前に出てしまうし、反対に腕が前に出ているとかかと体重になりやすいなどといったバランスを崩す要因が生じやすいんです」(西野プロ)

画像: 画像A アドレスの姿勢は、上腕骨が肩から真下に垂直に下がった位置にあることが大切

画像A アドレスの姿勢は、上腕骨が肩から真下に垂直に下がった位置にあることが大切

効率よくパワーを出すためには、「軸のある状態」で立って、その体幹の正面に腕がキープされていることが重要だ。アドレス時の上腕のポジションが悪いと腕が体幹の前から外れやすく、出力低下の原因になる。この「腕が体幹の前」の位置は、今後もトレーニングなどさまざまな動きをおこなううえで基本となるポジションなので覚えておきたい。

グリップについて考えるとき、4スタンス理論では「右手が上」にあることがカギになると西野さんは言う。アドレス時のグリップを見ると右手は左手よりも下にあるはずだが……。

「たしかに構えたときは右手が下に見えるのですが、グリップした手が胸の前にくるようにクラブを持ち上げると、上下が入れ替わって右手が上に来ますよね。『右手が上』とはこの状態を指します。グリップは、アドレスした状態ではなく、このように胸の前で作って考えることがとても大事なんです」(西野さん)

グリップを握る際は、まずはクラブを握らずに体の形を作るところから始めよう。
「軸のある状態」で正しく立ったら、両手を胸の前で『合掌』の型を作る。このとき左右の手のひらがわずかに押し合うようなテンションを感じ、そのテンションを最後まで維持し続けることが大事だ。

次に左右の手の位置をズラして両手の上下関係を作る。このとき、上体を右方向に回旋させながら胸の前で合掌した両手を前後にズラし、右手が上、左手が下の位置に来るポジションを作る。そして手の上下をキープしたまま上体の向きをスクェアに戻す。

画像: 画像B 体の正面で合掌し左右の位置をずらして両手の上下関係を作る

画像B 体の正面で合掌し左右の位置をずらして両手の上下関係を作る

「これで、体幹の正面に右手が上、左手が下、さらに上下の圧もある同圧の型ができます。ここから、両手を伸ばしてボールにセットしていくと右手が上のグリップが完成です。この同圧感が抜けずにセットできると、わきが軽くしまったしっかりと振っていける腕のポジションになります」(西野さん)

あとは前傾して上腕が真下に下がるように腕を下ろし、その位置でクラブを握れば完成だ。最初から手を下ろした位置でグリップを作ろうとすると上腕のポジションがズレたり体の向きがゆがんで軸を失いやすい。

画像: 画像C 体幹の正面に右手が上、左手が下、更に上下の圧もある同圧の型ができたら腕を下ろすとアドレスの形ができる

画像C 体幹の正面に右手が上、左手が下、更に上下の圧もある同圧の型ができたら腕を下ろすとアドレスの形ができる

実際のラウンド中にいちいちこの手順でグリップする必要はなく、プロなどは自分のルーティンのなかで思い思いにグリップを作っている。しかしまずは胸の前で正しいグリップの作り方を練習し体に記憶させよう。その結果、この手順を踏まなくてもスッと自然と正しいグリップが作れるようになるというわけだ。

「正しくグリップできるようになると、左右同圧で握れるようになって手が悪さをしなくなるんです。体の向きもズレにくく、アドレスも安定し、力まなくてもちゃんと力が入ります。結果的にスウィングにあれこれ悩むことが減るんです。手の力が抜けないとか力むという人は、ぜひグリップを見直してほしいですね」(松田プロ)

撮影協力/ザ・ロイヤルゴルフクラブ

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