「i525」アイアンのコンセプトは、操作性のある飛び系ブレードというもの。ややコンパクトでシャープな形状のヘッドで、中空構造を採用し飛距離性能に優れているモデルだ。7番アイアンのロフト角は29度とかなりのストロング仕様。実際、飛距離性能もかなり高い。
ほんの10年くらい前まで、中上級者向けと言えば、軟鉄鍛造のシャープなハーフキャビティと相場が決まっていた。男子プロも多くがそれらを使用しており、ゴルフに熱心な層を中心にそれらのモデルが軒並み人気になっていた。
しかし、ここ数年は異素材を採用した中空構造や上級者でも扱えるポケットキャビティの登場などにより、それまで軟鉄鍛造単一素材のマッスルバックやハーフキャビティを使用していた層が、よりやさしいモデルに移行する傾向が加速した。ある程度、腕に自身のある彼らのなかにも、より寛容性があり、より飛距離が出るアイアンを求める人が増えてきたのだ。
「i525」のヒットは、そんなニーズに応えたことがいちばんの要因だろう。違和感なく構えられるシャープな形状ながら、中空構造でボールは上がりやすく、同じ番手で比較すると、飛距離性能は1番手以上飛ぶ。軟鉄鍛造のような打感は望むべくもないが、これまで重視されてきた打感よりも、飛距離や寛容性を求める人が多くなったということだろう。
アイアンの種類を仮に以下の4種類に分類したとする。
(1)飛距離が出て、寛容性が高い
(2)飛距離が出て、操作性が高い
(3)飛距離は出ないが、操作性は高い
(4)飛距離は出ないが、寛容性は高い
(1)に該当するのは、いわゆる飛び系アイアンだ。多くのニーズがあって、市場にも数多くのラインナップがある。
(2)に該当するモデルは少ないが、「i525」はまさにここに該当する。前作「i500」では掴みきれなかった潜在的なニーズを掴んだといえるだろう。今後は、ここに該当するモデルがさら増えてくるはずだ。
(3)に該当するのは、マッスルバックやハーフキャビティなど、これまで中上級者に人気のあったアスリートモデルだ。アマチュアのニーズとしてはかつての勢いはなく、いわば宗旨替えするゴルファーが増えてきているが、もちろん根強いファンも多い。これらはプロが使用するモデルが多く、今後も多くラインナップされるだろう。
市場にほとんど見られないのが、(4)に該当するモデルだ。かつてはストロングロフトのモデルが少なかったこともあり、ノーマルな飛距離性能で寛容性が高いモデルが少なくなかった。それがいわゆるビギナー向けや若いアベレージ層向けになってきたわけだ。
昨今の寛容性の高いモデルは、軒並みロフトがストロングになっていて、パワーのあるビギナーにはかえって扱いにくいケースが少なくない。「i525」が(2)の潜在的なニーズにハマったひそみに習えば、(4)に該当するモデルももう少し市場にあってもよいのではないかと思う。
※(参考資料)矢野経済研究所「YPSゴルフデータ」より