多くのアマチュアにとっては、コースでのラウンドや打ちっ放しでの練習でさえ貴重な機会。日々の生活を考えれば、ゴルフのための外出に費やせる時間は決して潤沢ではないし、増やそうと思っても限度はある。だからこそ「普段の家での練習がとても大切ですよ」と兼濱は言う。
「なぜかというと、ゴルフクラブはバットやテニスラケットと違ってグリップの先に重心がありません。この偏重心性は日常生活でまず触れることがない要素なので、それに普段から慣れておくことが重要だからです。暴論に聞こえるかもしれませんが、クラブの偏重心性に慣れ、それに合わせて体を動かし振ることができれば、基本的に球はつかまるんです。でも、クラブの挙動に慣れておらず、体の動きが噛み合わないと、軌道がズレたりフェースが開いたりして、スライスやプッッシュなど、みなさんが悩むミスにつながってしまうわけです」(兼濱、以下同)
だからと言ってなるべく練習場に足を運ぶ頻度を増やし、ボールを打つことが上達にいち早くつながる、というわけではない。「もちろんボールを打つ機会は多ければ多いほどいいですが、実際にボールを打つ際は『クラブを振ること』と『ボールに当てること』という2つのタスクを同時にこなさなければならないからです」と兼濱は続ける。
「人間の脳は、2つのタスクをこなすことが、1つの物事に集中するより苦手です。だからこそ、スウィング自体の練習は家でこなし、打ちっ放しなど実際にボールを打てる環境では、たとえば、まずボールから一歩離れて素振りをしてから、ボールの後ろに立ちターゲット方向をチェック。スパット(目印)を見つけて、それに合わせて構えて打つ、といったような、実際のラウンドを想定したプレルーティンに注力して欲しいですね」
では自宅ではどのような練習に取り組めばいいのか。まず1つめのオススメ練習法として兼濱が挙げたのは「連続素振り」。
「ボールを打つのではなく、素振りだけに取り組むことで、タスクが『クラブを振ること』だけになり、よりクラブに慣れやすくなります。大きく振ることが重要なわけではありませんから、サンドウェッジを一番短く持って、ハーフスウィングといった小さい振り幅で連続素振りをするだけでも、じゅうぶん磨けますよ。1日30秒でもいいので、自分の時間が許す範囲で取り組んでみてください」
そして、2つめのオススメ練習法は「パッティング練習」だという。
「もちろん打点の1ミリの差が転がりに影響するため、そこを突き詰めるプロにとってはプレッシャーのかかるクラブではありますが、『ボールに当てる』という作業に関しては、クラブ長が短くフェース面は横に長く、振り幅も小さい、といったようにかなり安心材料があるクラブだと思います。『ボールに当てる』意識がなくても当たるクラブだからこそ、『クラブを振ること』との2つのタスクを同時にこなす練習になるんです」
まとめると、基本はボールを打たず連続素振りでクラブの挙動に慣れ、ボールを打つ練習はパターを使い、「振る」と「当てる」の2つのタスクを処理する練習をする、というわけ。今よりも上達したい、というゴルファーはぜひ参考にしてみてはいかがだろう。
協力/広尾ゴルフインパクト