かつては日本男子ツアーの「フジサンケイクラシック」、いまでは女子ツアーの「フジサンケイレディスクラシック」の舞台として有名な川奈ホテル富士コース。「難攻不落の川奈」として選手の前に立ちはだかるゴルフ場がなんだかやさしくなったように感じるのだが……。

高橋彩華が悲願の初優勝となった今年の「フジサンケイレディスクラシック」。初日には高橋が、2日目には木下彩がコースレコードタイとなる「63」をマークした。

開催コースである川奈ホテル富士コースは、今でこそあまり言われなくなったが、以前は「東洋一、難しいコース」とまで言われた難コースだった。急に川奈がやさしくなったのかと、感じたファンもいるのではないだろうか。

やさしくなったと感じる要素はたしかにある。

典型的なのが、名物パー3の17番だ(※通常営業の16番)。高い砲台グリーンと狭くて硬いグリーンは、これまで多くの選手を苦しめてきた。87年のフジサンケイクラシックでは、16番でチップインイーグルを決めた尾崎将司が、右手前の崖下からはるかに高いグリーンにアプローチして、連続チップインという離れ業をやってのけた。

かつてのジャンボですら、手前の崖に落とすくらいだから、17番は女子選手にとってはかなりの鬼門だった。海風の吹く中、180y先の硬いグリーンに止めなくてはいけない。実際、グリーンに落ちたボールが止まらずに奥にいったり、高いスライスボールで止めようとして、右下の崖に落ちてしまう事も少なくなかった。優勝争いのさなかにダブルボギー以上を打ってしまった選手もいる。

しかし、ここ数年は様相が違ってきた。選手たちの飛距離が全体的に伸び、パワーのある選手はゆうゆうとアイアンでグリーンをとらえ、そうでない選手もUTを駆使した高いボールで難なくボールを止めてくるのだ。右の崖下からアプローチする選手は、以前に比べて、かなり少なくなってしまった。

画像: 風の吹く中180Y先のグリーンに止まる球を打たなければいけない17番もUTを駆使して止まる球が打てるようになった(写真は2022年のフジサンケイレディス 撮影/Getty Images)

風の吹く中180Y先のグリーンに止まる球を打たなければいけない17番もUTを駆使して止まる球が打てるようになった(写真は2022年のフジサンケイレディス 撮影/Getty Images)

川奈ホテル富士コースは、もともと男子ツアーが開催されていたのが、距離が短いために女子ツアーの開催コースとなった経緯がある。同様に、道具の進化と選手たちの体力向上が、たしかに川奈をやさしくした側面があるといえるだろう。

いっぽう、川奈の特徴である硬くて非常に芝目の強い高麗グリーンには、多くの選手が苦しめられていた。順目の下りでまったく止まらないような傾斜もあちこちにある。安田祐香や藤田さいきなど、タッチもよく、厳しいラインをいくつも決めている選手が上位にきていた印象だ。

さらに川奈を難しくするのが、海からの強い風だ。今年はあまり風が吹かなかったことが、好スコアが出た大きな要因だろう。アップダウンが大きく、グリーンが硬くて難しい川奈で、強い風が吹いたらアンダーパーがほとんど出ないような展開もありえる。このあたりがシーサイドコースの妙でもある。バーディー合戦も面白いが、強風で翻弄されるプロたちの姿が見られるのも川奈の醍醐味だ。

近年、川奈ホテル富士コースでは、海岸線に面した木々を大胆に伐採し、開場間もない頃の光景を思わせる、海がより開けたロケーションになった。まさに日本が誇る名コースらしい美しい景観が楽しめるようになったが、いっぽうで風の影響はより強くなるのではないかと思う。

なかなか気軽にはプレーできないが、機会があればぜひスッキリと開けた富士コースの景観を体験してみてほしい。

画像: 2014年(左)と2021年(右)のトーナメントの16番ホール。海岸線に面した木が伐採されているのがわかる。美しい景観が眺められるが風の影響は大きくなる(筆者撮影)

2014年(左)と2021年(右)のトーナメントの16番ホール。海岸線に面した木が伐採されているのがわかる。美しい景観が眺められるが風の影響は大きくなる(筆者撮影)

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