「トラックマン」や「フライトスコープ」といったレーダー式の弾道計測器の利点は、ボールを落ち際まで(水平位置)トラッキングすることで、飛距離やスピン量ボール初速などのボールデータと、クラブ軌道、フェース向き、入射角といったクラブデータの両方が測定できることにあります。
いっぽうカメラ式の計測器は、高速カメラでクラブとボールの動きを正確に分析できることが利点となっています。それぞれ利点はありますが、どちらの計測器もゴルファーのもつ傾向や修正点を発見し、効率のよいインパクトを見つけることで遠回りすることなく、スウィング改善ができるようになってきました。
レーダー式の弾道計測器も計測した膨大なデータをもとにつねにアップデートが施され、ボールからネットやスクリーンまでの距離が3メートルほどしかないようなインドアスタジオであっても、正確なデータが計測できるようになったことで、レッスンだけでなくクラブフィッティングやオンラインで対戦できるバーチャルゴルフにまで広がりを見せています。
今回試打したのは、フルスイングゴルフという米国メーカーの『フルスイングKIT』というレーダー式の弾道計測器です。自宅にフルスイングゴルフのシミュレーションゴルフを導入しているというタイガー・ウッズが、16項目のデータのピックアップ、価格を抑えた商品にすることなどをアドバイスし、深く携わったといいます。そのため本体価格は60万円(税別)という、「トラックマン」や「フライトスコープ」の200万円オーバーの機種と比べると大幅に安い価格設定となっているのが大きな魅力といえるでしょう。
実際に試打してみると、計測データの表示スピードは速くipadでの表示も見やすいですし、表示項目やマイルとメートルの表示選択も可能になっています。もちろんipadだけでなくiphoneやアップルウオッチでも使用可能で、本体にある画面でも必要だと思われる4つのデータも選んで表示させることができます。
気になるデータの信ぴょう性は、トラックマンと比較してもほぼ同じ数値が確認できました。クラブパスや入射角といったスウィング改善を目的とした使い方だけでなく、レーダー式の弾道計測器のメリットを生かして、インドアだけでなく普段通っている練習場に持ち込んで番手ごとの距離を計測したり、ヘッドやシャフトをカチャカチャしながらデータを比較してみたりと自分なりのフィッティングを楽しむこともできそうです。大きさは「トラックマン」や「フライトスコープ」よりもコンパクトで5時間使用できるバッテリーが内蔵されているので持ち運びも苦にならないでしょう。
いいことづくめのように聞こえますが、ほかの弾道計測器では練習場モードがあり練習場が表示されたスクリーンに向かって打つことができますが、この『フルスイングKIT』では練習場モードやコースをラウンドするシミュレーションモードは『E6connect』という別売りのアプリを購入する必要があります。選べるオプションの数によって年間4万円や8万円のサブスク契約、もしくは1回払いで10万円を支払う必要があるので、そこは本体価格を抑えた分と考えるのは仕方ないところでしょうか。
もう一つ、「トラックマン」や「フライトスコープ」では置くだけでボールとの高さや地面の傾きを自動で合わせてくれる機能が備わっていますが、「フルスイングKIT」にはそれは備わっていません。人工芝のマットと同じ高さに設置する必要はありますが、ターゲット方向を合わせるのは内蔵カメラの映像をiphoneやipadで確認して合わせるだけなので高価なモデルと同じように簡単にセットアップできます。
これまでの弾道計測器が高価で手を出せなかったゴルファーには、大いに選択肢に入れるべき計測器だと思えるますが、それでも60万円という価格を高いか安いかという判断は使い手によるでしょう。例えば、インストラクターやコーチ、インドアスタジオのマネジメントの立場から考えると「トラックマン」や「フライトスコープ」1台分の費用で3台購入できることは、かなりのお得感があるはずです。
一般ゴルファーでも手の届くガーミンの「アプローチR10」をインプレした際にも多くのプロやインストラクター仲間から問い合わせが届きましたが、今回のこのインプレッション記事も問い合わせが多く来るだろうなと予想します。試打時間が短かったのでもう少し使用してみたいところでしたが、買いか?と聞かれたら、買いだと答えてしまうでしょうね。