国内女子ツアーの今季メジャー初戦「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」最終日、初日から首位を走る20歳の山下美夢有がリードを守り切り、ツアー通算2勝目を完全優勝で飾った。今季絶好調の西郷真央が予選ラウンドで姿を消す中、同い年の山下が優勝。上位には黄金世代より下の世代が多く名を連ね、世代交代のさらなる加速を証明するような大会となった。
初日に大会コースレコードの64で飛び出すと、2日目はスコアを落としたものの1打差で単独首位キープ、3日目にはリードを6打に広げ、最終日は重圧の中、危なげなく逃げ切りV。身長150センチと小柄で人懐っこい笑顔からは若さではなく、幼さすら感じさせる山下だが、プレーぶりはまさに圧巻だった。
必要以上に幼さを感じたのは決勝ラウンドの2日間、安田祐香とともに最終組でプレーしていたからかもしれない。2人はともに関西出身でジュニア時代からの顔見知り。2019年合格のプロテスト同期でもある。同年末に都内でおこなわれたJLPGAの新人セミナーに参加する際、山下は“一人旅”が不安だったのか、1歳年上の安田に頼んで新幹線で一緒に移動してもらっている。現在の山下はひとりでツアーを転戦するなど、すっかりたくましくなっているのだが、並んで歩く姿を見るとそんな微笑ましいエピソードを思い出さずにはいられなかった。
2人以外にも今大会は若い選手が上位を占めた。少し前まで「若手の台頭=黄金世代の活躍」だったが、メジャーの厳しいセッティングで躍動したのはさらに下の世代。3位タイに入った昨季の賞金女王・稲見萌寧、5位タイの菅沼菜々は黄金世代よりも1つ年下。5位タイの後藤未有、7位タイの安田はもう1つ下のミレニアム世代。そして優勝は山下だ。もはや黄金世代を若手とは呼べない雰囲気になってきた。
急速に世代交代が進むなかで、2位に食い込んだ青木瀬令奈も印象的だった。山下、安田とともに2日間、最終組でプレー。ティーショットで離されても、マネジメントやショートゲームの技術で対抗した。来年2月で30歳とこちらはベテランと呼ばれる日が近づいているが、昨年ツアー2勝目を挙げるなど、まだまだ進化を続けている。大山志保、上田桃子、申ジエらのような元賞金女王級の超トップ選手ではなく、藤田さいきのような若手に負けない飛距離の持ち主でもない30代のシード選手は稀有な存在。コロナ禍のなかのプレーヤーズ委員長という難しい役割をこなしてきた青木には、世代交代の荒波を乗り越え、そんな数少ない一人になれるたくましさが備わっている。