「トラックマン」や「フライトスコープ」、「ガーミンアプローチR10」に代表されるレーダー式の弾道計測器とカメラ式は「GC4」やディテクト社の「プリズム」など多種あるが、それぞれの特性についてプロゴルファーでTPIレベル3、タイトリストフィッティングスペシャリスト、トラックマンマスターという3つの肩書きをもつ“三刀流プロ”・小島慶太に「トラックマン4」と「GC4」を使って試打し、データを比較してもらった。
レーダー式の弾道計測器「トラックマン」や「フライトスコープ」はレーダーを使ってクラブの動きとボールのフライトを計測し屋内外で使用できる。大きな特徴は屋外で使用した場合にレーダーが追尾して実際の飛距離や弾道を計測できることにある。屋外ならではの気圧や気温、風の影響も含めた飛距離や弾道の高さを計測できることも忘れてはならない。それとレンジボールを打った場合でもコースボールで打った数値に変換してくれる機能も優秀だ。そして屋内であっても弾道の計測ができるのは、計測距離が短くなっても実際に計測したデータとこれまでの膨大なデータから推測されるデータを掛け合わせているからだ。
いっぽうのカメラ式の計測器は、インパクト前後のクラブとボールの動きを超高速度カメラで撮影したものを瞬時に解析し、想定される弾道を表す。特徴としてはインパクトロケーションといわれるフェースのどこに当たったかを判別しやすい、ボールの回転を読み取ることで弾道を忠実に推測することができること、フェースがインパクト前後でどれくらい開閉したかを示すクロージャーレートも計測することができたりするところ。
打ち出し角やボール初速、スピン量、弾道の高さ、キャリーとランを含めた総飛距離といったボールデータと、クラブ軌道、入射角、ヘッドスピード、フェースアングルといったクラブデータの両方が計測できるのはどちらのタイプの計測器にも共通する部分だ。「トラックマン」はインパクトでボールを押し込んだ瞬間を計測し、「GC4」ではボールに当たる直前を計測しているためヘッドスピードに関しては多少の違いが出たりと、計測するポイントによって計測データの違いが発生するため、数値が違っていても間違っているデータが表示されるているわけではない。
ドライバーショットを2つの計測器で同時に測ったデータをみてみよう。画像Aは「トラックマン4」、画像Bは「GC4」の計測画面だ。赤丸で示したボール初速、スピン量、打出し角、ランディングアングル(落下角度)の4項目を見てみると、ほぼ同じ数値が表示されていることが確認できる。
例えば、ボール初速は「トラックマン」の70.7m/sに対して「GC4」は71m/s、スピン量においてはわずかに9rpmの差でしかない。屋内で計測したためキャリーやランを含めた距離についてはどちらも想定値ということになるが、小島プロによると「GC4」のほうがキャリーが多く表示される傾向にあるという。
「どちらも非常に優秀な計測器でそれぞれメリットがあります。レーダー式はとくに屋外での弾道計測に強みがありますし、カメラ式は狭い屋内で距離が取れないときにでもボールの回転を正確に読むので弾道を忠実に教えてくれます」(小島慶太プロ、以下同)
しかし、計測ポイントの違いによって大きく数値が異なる場合もあると小島プロ。
「ドライバーで芯を外してインパクトをした場合、フェース面はフェースセンターから外側に向かって丸み(バルジ・ロール)を帯びているため、例えばトウ側でヒットした際には「トラックマン」はボールが当たった右を向いたフェース面を計測するためフェースが開いて当たったと判断します。「GC4」の場合は、計測用のシールを貼ることでフェースの向きを見ています」
屋外であれば「トラックマン」の弾道を追う性能も手伝って正確な弾道や数値が表示されるが、屋内に限っていうと、このように「トラックマン」と「GC4」の計測データに違いが出ることもあるという。画像CとDはひとつのショットを同時に計測したものだが、「トラックマン」ではフェースが4.8度オープンと表示され、「GC4」では0.1度と表示されている。トウ側の下目でヒットしたことにより「トラックマン」ではバルジのあるフェース面が右に向いたトゥ側に当たったことで開いて当たったという計測値を表示していることがわかる。
今回比較したのは「トラックマン4」と「GC4」というプロやコーチが使用する同価格帯のモデルだ。ブライソン・デシャンボーや松山英樹はそれぞれの特徴を考慮したうえで2台を練習場に持ち込み、そのときの用途によって2台同時に計測したり、どちらかいっぽうの計測器を使って計測したり、と使い分けているようだ。