2打のリードをもって迎えた最終日、渡邉は5番までに4バーディ。2つのパー5で2打目をグリーン近くまで運び、305ヤードと距離の短い5番パー4では1オン狙いと、飛距離を生かしたスタートダッシュだった。これで一時は独走態勢に入ったが、8番ではティーショットを右にOBとし、痛恨のダブルボギー。後半も出入りの激しい内容で高橋の追い上げを許した。さらに18番パー5でおこなわれたプレーオフ2ホール目にはティーショットを大きく右に曲げ、ラフを渡り歩く苦しい展開。それでも、なんとかパーオンに成功すると、15メートルのバーディパットを沈めて一気に形勢逆転という劇的な勝ちっぷりを見せた。
安定したショットでつねにフェアウェイをとらえるゴルフはもちろん素晴らしいが、ファンが見ていて面白いのは、豪快に飛ばし、時には曲げて、ピンチに陥りながらも、スコアを伸ばすプレーのはず。飛距離とリカバリーはアマチュアには真似できないプロの真骨頂。本人は曲げたくないだろうが、最終日の渡邉のプレーはそんな飛ばし屋らしさが詰まったものだった。
ただし、今季の国内女子ツアーでは魅力的なプレーを見せてくれるはずの飛ばし屋たちが劣勢だ。現時点でドライビングディスタンスとメルセデス・ランキングの両部門で同時にトップ10入りしているのは渡邉だけ。対照的にフェアウェイキープ率上位10人には山下美夢有、堀琴音、西村優菜、青木瀬令奈とメルセデスでもトップ10に名を連ねる選手が4人もいる。
これは世界的に見ても珍しい現象。米男子ツアーではフェアウェイキープ率よりも飛距離が成績に直結するとされており、今季のスタッツもその定説通りの結果になっている。フェアウェイキープ率トップ10の選手でフェデックス・ランキング最上位はブライアン・ハーマンの62位。いっぽう、ドライビングディスタンス上位にはフェデックス7位のジョン・ラーム、同12位のローリー・マキロイとビッグネームの名前がある。米男子ツアーは明確にフェアウェイキープ重視の安定型よりも飛ばし屋が優勢のツアーといっていいだろう(データは先週時点)。
同様に各ツアーのスタッツを見ていくと、欧州男子ツアー、米女子ツアーも極端ではないものの、飛ばし屋が優勢。今季はまだ試合数が少ないため、昨季のスタッツを参考にすると国内男子ツアーは賞金ランク上位に両者が混在する互角のツアーといったところ。“ゴルフは飛ばしっこじゃない”“上がってなんぼ”とはいうものの、飛ばし屋が上位に来られないツアーはなかなか見つけられない。
ここまでは不思議なほど、安定型が強い国内女子ツアーだが、原英莉花、勝みなみら実績のある飛ばし屋が徐々に調子を上げており、シーズンが終わるまでに勢力図が変わる可能性もじゅうぶん。「日本で頑張っている以上は1番になりたい。まだまだ試合はありますし、トップを目指して頑張りたいなと思います」と話す渡邉がその先頭を走り、さらにファンを魅了するプレーを見せてくれるはずだ。