キャップのツバを上に向けスリムなボディをリンドバーグに包んでPGAツアー5勝を挙げたスウェーデン出身のパーネビック。子供のベビーシッターだった同郷のエリンさんとタイガー・ウッズの恋のキューピットになったことでも有名だ。
57歳になった今でも現役時代と変わらずスリム。スタイリッシュな出で立ちはファッション誌に登場してもおかしくないほど……(つい先日までは)だった。ところが直近の彼の姿はまるで別人。誰なのかわからないほど変貌している。
無人島で何年もサバイバル生活を送ってきたかのように白髪混じりのウェイビーヘアを長く伸ばし、いっそう痩せて見える顔にはボーボーの眉毛と口ひげが。かつての面影はゼロではないか! いったいパーネビックに何があったのか?
シニア入りして2年目に1勝を挙げたもののそれ以来、米チャンピオンズツアーでの優勝はなく「自分と賭けをしたんです。次に勝つまで髪は切らないってね。勝てないからこんな仕上がり(笑)。評判? 父はすごく気に入っていますよ。でも妻はそうじゃないみたい(笑)」
サバイバルスタイルを気に入っている父ボーさんは刑事コロンボなどの形態模写、今でいうモノマネで一世を風靡したスターだった。20年近く前スウェーデンで彼の実家(船着場まである豪邸!)を訪ねボーさんを取材したことがあるが、思えばこのサバイバルルックは父親とそっくり。息子の髪を短く刈り込んだヘアスタイルが以前から気に食わなかったらしくニュールックを歓迎しているという。
ゴルフを始めた頃は「あのボー・パーネビックの息子が大会でミスをした」など父のことばかりがフューチャーされ「嫌気がさした」といったこともある。だが今では父より息子のほうが有名になった。
ツアーで活躍し始めた頃、来日した際のインタビューで彼が語った初恋の物語が忘れられない。好きだった女の子は読書が大好き。本を介してなんとか親しくなれないかと考えたパーネビック少年はその子からオススメの本を借りることに成功した。読み終わると彼女の家を訪ね本を返し次の本を借りる。いっぺんにたくさん借りてしまうと会えるチャンスが減るので借りては返し、借りては返しを繰り返し親しくなったのだとか。「これが初恋の思い出」と澄んだ瞳で見つめられた。
その彼も還暦間近のおじさんになってしまった。欧州ツアーデビューしてほどなく、優勝を逃した悔しさに思わず池に飛び込んだら「浅いと思った池がすごく深くて全身すっぽり水に浸かってしまった」というエピソードも。「キャップが無人の池にプカプカ浮いてたよ(笑)」。
こんな個性派が少なくなったことに隔世の感。少し寂しい。