ドローからフェードに変えて調子が戻り、「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」で優勝。好調をキープし続けている堀琴音のスウィングを東大ゴルフ部監督で日本におけるプロコーチの草分け的存在、現在、成田美寿々、穴井詩らのコーチを務める、井上透が解説!

2018~2019年のシーズンは不調に悩んだ堀琴音選手でしたが、持ち球をドローからフェードに変えて復調。昨季はプロ入り初勝利を挙げ、今季もすでに1勝と、安定した成績を残しています。そんな彼女の最大の特徴は、徹底して左に曲がらないようにしているところにあります。

 まず、グリップですが、左手をウィークに握ることで、球のつかまりを抑えています。さらに、バックスウィングでは、フェースを開きながら、かなり外に上げていき、トップ、ダウンスウィングでも、フェースを閉じることがありません。

画像: 基本的に、クラブが腰の高さに上がったとき、フェースが背骨と平行になるくらいがニュートラル。それよりもフェースが地面に向いていたらシャット、空を向いていたらオープンと判断できる。堀選手は、ニュートラルなフェース向きに比べて、かなりオープンであることがわかる

基本的に、クラブが腰の高さに上がったとき、フェースが背骨と平行になるくらいがニュートラル。それよりもフェースが地面に向いていたらシャット、空を向いていたらオープンと判断できる。堀選手は、ニュートラルなフェース向きに比べて、かなりオープンであることがわかる

 ダウンスウィングのクラブの軌道よりも、フォローの軌道がインサイドに抜けているのは、カット軌道で振っている証拠。このように、体の動きを見ても、クラブの動きを見ても、「左には絶対に曲げないぞ」という強い意志が感じられるスウィングと言えるでしょう。

 ここまで徹底して左の曲がりを防いでいるということは、子供の頃から、球をつかまえることに関して悩んだことがなかったのだと思われます。気持ちよく振ったらドローになる、ナチュラルドローヒッターだったのではないでしょうか。

正直、堀選手のポテンシャルからすれば、ドローのままでも勝てたと思います。でも、ドローをフェードに変えることで「確信を持って打てる球種」が手に入り、不安が払拭されて結果につながったのでしょう。

画像: ダウンスウィングの軌道よりフォローの軌道のほうが、かなりインサイドに抜けている。カット軌道で振っている証拠だ

ダウンスウィングの軌道よりフォローの軌道のほうが、かなりインサイドに抜けている。カット軌道で振っている証拠だ

 近年、プロを目指すジュニアは、小さな頃からプロコーチに指導を仰ぐため、昔に比べて個性的なスウィングをする選手はあまり見られなくなりました。そのなかで言えば、堀選手のスウィングは、ジュニア期の特徴を色濃く残した個性的なものだと言えます。

たとえば、前傾の浅いアドレス、ノーコックのバックスウィングなどは、子供の頃に自分の身長に対して長いクラブを使ってスウィングを作り込んだプレーヤーに見られる傾向なのです。

 ただ、これだけ重心の高い構えをしていながら、重心の低い重みのあるインパクトを実現し、体重の乗った強い球を打てるところが、堀選手の非凡なところです。

 おそらく、コーチは本人の感性、個性を尊重し、型にはめることなく育てたのだと思いますが、その結果、非常に高い感性が磨かれ、その感性によってボールをコントロールできている。それが、堀選手の強みと魅力になっているのです。

 とはいえ、ここまで左のミスを消したスウィングは、多くの一般アマチュアにはあまりおすすめできるものではありません。とくに、スライスに悩んでいる人などが参考にすると、球の曲がりを助長しかねないので注意してください。

 少し限定的な言い方になりますが、堀選手のスウィングを参考にしてもらいたいのは、強いフックに悩んでいる人が、左のミスを減らしたいときでしょうか。

 グリップはストロングではなくウィーク。バックスウィングの軌道はインサイドではなくアウトサイド。フェースの使い方はシャットではなくオープン。そういうポイントを意識しながら練習してもらうと、球のつかまりが抑えられ、左のミスは出にくくなるでしょう。

写真/岡沢裕行

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